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産神祭礼故障出入の済口證文

(「産神祭礼故障出入の済口證文」)

森町から出た古文書を引き続き読んでいる。まず手に付くのは、やはり読みやすい文書である。「産神祭礼故障出来の件」である。明治にあと五年に迫った時代、お祭りで「故障」が出来(しゅったい)した。この「故障」は機械の故障という意味ではなくて、「物事の進行が損なわれるような事情。さしさわり」という意味である。相手が本町、こちらが何町なのか記されていない。これは控えとして書き写した文書で、当方の町名は解りきっているから記さなかったのだろう。この「故障」は祭りには付き物の喧嘩のようなものだったのだろう。読み下したものを示そう。

引請け一札の事
一 当九月産神祭禮の時節、その町内、本町と両町故障出来(しゅったい)、かれこれ混雑中、本町の者ども、中泉御役所へ越訴いたし、御出役これ有り、名差しの者六人御呼び出し、双方御利解の上、当御役所へ御引き渡しには相成り候えども、中泉郷宿にて当御役人御出張、示談事済みの由、済口書面六人の衆へ出させ候様、申し付け候ところ、その町内、残りの人数不承知にて、調印致さず、町内一同聞き定めこれ無きゆえ、向い天方城下両村役人立ち入り、その町内の衆中、来たらざる儀に付、種々申し諭し得心致され候訳は、本町我儘の書面に候えども、御地頭様の儀を重んじ、村役人難義を思われ、調印致させ候上は、当村名主並び七ヶ村名主中、きっと引受け、右済口書取り戻し申すべく、引合にて差し出させ候ところ、本町の者ども違変不法申し立て、返さず居り候、半(分)は右済口一札、本町方にこれ有り候とも、向後反古に致さすべく候義、相違これ無く候、しかる上は、右済口書面の儀に付、本町より如何様(いかよう)の義申し出候とも、当村名主中、七ヶ村名主中、何方(いづかた)までも罷り出、きっと申し開き仕り、少なくもその町内へ御世話相掛け申すまじく候、後日のため、七ヶ村名主中、当村名主中、引受書差し出し、連印よってくだんの如し
 文久三亥(1863)十月         七ヶ村
                          森


※ 越訴(おっそ)- 江戸時代、管轄の役所・役人を越えて上級の官司に提訴したこと。
※ 郷宿(ごうやど)- 江戸時代、村の世話役や農民が公用で城下町または陣屋などへ行った際の定宿。
※ 済口書面 - 済口證文。和解の内容を記し、双方が連印した文書。
※ 違変 - 約束などを破ること。


済口書面の文面にそれぞれの町役人が出向いて調印したものの、肝心の当事者が応ぜず、間に天方城下両村役人が入って、ようやく双方を説得したものの、今度は本町方が済口書面を戻さないため、済口書面が宙に浮いた形になった。説得した手前もあるから、今後、この済口書面については文句を言わせないと約束した文書でこれも済口證文の一つであろう。江戸時代の揉め事の解決方法が知れて面白い。
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