「不動」である。あの「不動明王」の顔の部分だ。本来は仏像の仲間であり、大日如来など本尊を守るために脇にある像なのだが、顔の部分だけを模写して面にしたものらしい。だから、能面とは種類が違うが、面を作ると言う作業には特に不都合はないみたい。
不動明王は元々密教の本山である「東寺」や「成田山新勝寺」あたりが有名であろう。それ以外にも有名な古寺には仏像があり、それらを守るために脇侍として多聞天、増長天などと一緒に不動明王が安置されている場合が多い。その顔の部分を取り出したものが、今回の「不動」と言うことになる。
さて、次の写真も不動だ。ただ、写真は能面師寺井一佑氏が作成した不動を借用させて頂いた。これは前にも紹介した黒式尉と同じ「三井記念美術館」所蔵の面の模写と思われる。本物に見られる彩色のはがれ、傷の部分などがほぼ正確に再現されており、その技術の高さがうかがわれる。名称も「不動」。
さて、この2種類の不動だが、私の能面の先生が作ったのは1枚目の写真だから、おそらく私もその不動を作ることになろう。ただ、どうもこっちの不動は誰かの創作のようで、実物を模写した面ではない気がする。第一、図面があるのかもまだ分からないし、いずれにしても14日になってみないとよく分からない。
黒式尉の素彫りが終わって、今の期間は一時的に暇になっている。ここしばらくは続けて作業をしていたから、ちょっと休んで次への英気を養っておこうと思っている。