若者がLINEのトークの最後に「。」をつけると、冷たいとか怖いと感じる「マルハラ」なるものがあるそうです。以前から若者は文章に「。」をつけないという話は聞いたことがありますが、いよいよハラスメントと言われるまでに嫌われるようになったのかと驚いてしまいます。いやいや、文章の終わりに「。」つけなきゃおかしいでしょ、と思う人は、もう若くはないようです。そもそも彼らは「文章」を書かないそうですから。そりゃ「。」もつけません。
僕がコピーライターになった40年ほど昔、キャッチコピーに「。」をつけるのがトレンドになっていました。それまでのキャッチコピーは「男は黙ってサッポロビール」みたいに「。」がつかないのが普通でした。しかし1980年代に入って糸井重里が「おいしい生活。」とか仲畑貴司が「おしりだって、洗ってほしい。」とか書いた頃には「。」をつけないとカッコ悪いとなっていました。新人だった僕も当然真似して書いていましたし、「。」で終わらないキャッチコピーを書いた記憶がありません。
当時の若者の感覚では「。」がつくことで、言葉に息遣いのようなものが感じられて、単なる広告の宣伝文句ではなく、語り掛けられているようなパーソナルさが表現できていると思っていました。「。」がつかないキャッチコピーは何となく古臭く感じられたものです。だから今の若者が「。」がつくと冷たいとか怖いとか感じるのと、ある意味では真逆の捉え方を当時の若者はしていたということになります。
ただ今でも新聞広告や雑誌広告のキャッチコピーを見ると「。」はついています。僕が現役だった時代と基本的なコピーの構造は変わっていません。少し安心しますが、逆にこれで若者に届くのかなという懸念もあります。そもそも新聞や雑誌なんて今どき若者は見ていないからと言われたらそれまでですが、そのままwebにも同じキャッチコピーを使っていたりしますから、もう少し「マルハラ」について特に中堅以上のコピーライターは意識して書いた方が良いんじゃないかなと思います。