藤井聡太八冠がタイトルを奪われるとしたら伊藤匠七段だろうというのは、多くの将棋ファンが考えていたことでしょう。藤井と伊藤は同い年で、小4の時に大会で伊藤に負けた藤井が大泣きしたエピソードはファンならずとも多くの人が知るところです。しかしその後は藤井がグングンと成長して向かうところ敵なしのまま次々と最年少記録を更新して、あっという間に八冠を制覇してしまいました。
藤井が登場するまで将棋界を支配していた渡辺明、豊島将之、永瀬拓矢らのタイトルホルダーを藤井はいとも簡単に打ち破ってタイトルを奪取し、そして防衛戦でも挑戦者を軽く返り討ちにしていく様子はまさに爽快と言えるほどの強さでした。これまで地味だった将棋界のスーパースターとして「藤井フィーバー」を巻き起こしましたが、その強さが異次元過ぎて、羽生善治を追いかけた森内、佐藤、郷田、丸山ら「羽生世代」のように「藤井世代」が後に続けるのかと心配になるほどでした。
その中で藤井世代として早くから注目を集めていた伊藤ですが、タイトルを取るにはまだ時間がかかるかと思っていたら、こちらも予想以上のスピードで成長して今回叡王を奪取してしまいました。伊藤が叡王になったことで、八冠全て「藤井世代」のものになっていることには変わりありません。これからしばらくはまだ藤井は年上の棋士とタイトルを争うことになるのでしょうが、藤井のライバルとなるのは、やはり藤井よりも同世代か年下の棋士になると思います。
いま一番の注目株は昨年躍進した18歳の藤本渚五段です。2023年度の最高勝率を藤井と争い、最多勝を伊藤と分け合いました。藤井、伊藤、藤本の「3強」時代がもう数年後には繰り広げられている可能性が高いです。