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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

豊下楢彦 『昭和天皇・マッカーサー会見』

2012年10月12日 | 現代史
 「ワンマン吉田」政治のさらにその上に「ワンマン」として在った政治的アクターとしての昭和天皇。そしてそれは「政治的責任を負えないもの」「公に説明責任を果たし得ないもの」が「政治的過程に介入し影響力を発揮」(130頁)したということであったと。そしてそれを著者は「日本の政治と民主主義の根幹を突き崩すことを意味する」(129頁)としたうえで、こう総括する。

 仮に、この状況を評価せざるを得ないとすれば、日本の政治の持つ病根は限りなく深く、日本の民主主義は救いがたく未成熟である、と言わざるを得ないであろう。 (「第3章 「松井文書」の会見記録を読み解く」 本書129頁)

 ただしこの評価が、昭和天皇とマッカーサーついでリッジウェイとの会見時のそれを指しているのか、それ以後今日までの日本をも含んでいるのかは、著者は明確にはしていない。

(岩波書店 2008年7月第1刷 2008年9月第3刷)