書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

木下彪 『明治詩話』

2018年06月20日 | 人文科学
 出版社による紹介

 江戸時代までならかろうじて写しえたかもしれない伝統的な漢詩の文体は、明治を迎えて、いまだ色濃く残る“江戸”を詠うか、漢字を用いた新語をそれが漢字であるという点に縋って取り入れることにより文明開化の新世界を取り入れようとする。だがそれが結局できずに衰退してゆくのは、同じ漢語でも明治の新造語彙は意味とその新義をもたらす原理(=文明)が異なっていたからだという視座と枠組みで、私は全篇を読んだ。たとえば狂詩は狂詩家が作るからそうなるのではなく、たとえ正詩を作ろうとしても、新語彙が全体のなかで木に竹を接いだような具合になって、どうしても滑稽な肌合いになってしまうと。つまり狂詩である。

(岩波書店 2015年3月)