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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

立花隆/利根川進 『精神と物質 分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか』

2016年01月03日 | 抜き書き
 やっぱり各論より根本的な原理を探究する研究をしたいと思わなければ本当のサイエンティストとはいえませんよ。ところが現実には、各論の中でもとりわけどうでもいいようなことをやっている人が多すぎるんです。 (「第三章 運命の分かれ道」115頁)

 結局、何が本当に重要なのかを見極めないうちに研究をはじめちゃうからなんですね。〔略〕だからぼくは学生に、“なるべく研究をやるな”といっている。“何をやるかより、何をやらないかが大切だ”とよくいっている。 (「第三章 運命の分かれ道」115頁)

 これなら一生続けても悔いはないと思うことが見つかるまでは研究をはじめるなといってるんです。科学者にとって一番大切なのは、何をやるかです。何をやるかというアイデアです、そして、何をやるかを決めるのは、何を重要と思うかです。若いときに本当に大切なのは、この本当に重要なものを重要と判断できるジャッジメント能力を身につけることなんですね。若いときにそれを身につけなかった人が多いから、どうでもいいことをやっているのに自分では何か重要なことをやっているつもりで一生を終るサイエンティストが多いわけです。 (「第三章 運命の分かれ道」116頁)

 チョウチョウ一般についてわかっていることを、また別のチョウチョウについて調べてみても、いままでの考え方をくつがえす発見がある可能性はかなり低いわけです。それに類したことをいくらでもある。だからやっぱりどういう研究をすればより一般性がある法則の発見につながるかという判断が重要になるわけです。 (「第三章 運命の分かれ道」116頁)

 ぼくの実験は、アイデアだけが勝負の実験で、試料にしと、試薬にしろ、テクニックにしろ、何も特別なものは使ってないんです。追いかけようと思えば、誰でも簡単に追いかけられる
。 (「第七章 もうひとつの大発見」248頁)

(文春文庫 1993年10月 もと文藝春秋 1990年7月)