魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

アラ

2023年10月16日 18時19分49秒 | 魚紹介

この間フエフキダイ(2013年以来)、ハマフエフキ(2009年以来)、とご無沙汰だった魚を紹介してきたのだが、この魚の紹介も久しぶりである。アラという深海性魚類の一種。

2009年に入手した個体

今回入手したアラの尾鰭

アラは2009年、沖合底曳網漁業の有限会社昭和水産 海幸丸に乗せて頂いたときに漁獲された魚を紹介した時以来の登場となる。そのときは白っぽい体に黒い線が入る個体を紹介していたのだがこれは幼魚の色彩であり、成長すると灰色の地味な色彩の魚になってしまう。ただし、尾鰭の上・下端が白いのは成魚でもかわらない特徴である。むしろ尾鰭の白い模様は成魚ではよりはっきりとしている(ように見える)。この個体は全長465mm、体長383mmであるが、もっと大きくなる。80cm~メーター近くにもなるという。

アラは従来スズキ科とされてきた。しかしその後はハタ科の中に含められたり、いや、ハタ科には含められないといわれたりしてきた。ここ何年かはアラはハタ科ではなく1科1属1種のアラ科に落ち着いているようである。前鰓蓋隅角部に大きな棘があり、これによりハタ科と見分けられるようである。また普通のハタ科は背鰭棘数が11以下であることが多いのに対してアラは背鰭が13棘であるのも特徴らしい。なお、九州で「あら」といえばハタ科のクエのことを指すため注意が必要。クエのような巨大なものは少ないが、アラもメーター近くにまで成長し、今回購入した魚の中では最も高級な魚であった。分布域は広く、北海道太平洋岸・青森県日本海岸~九州南部、東シナ海、まれに瀬戸内海、海外では韓国、台湾、スル海にすむとされるが、このほか「沖縄さかな図鑑」においては琉球列島でも釣獲された個体が掲載されている。生息水深はマチ(ハマダイなどの遊泳性フエダイ類)よりも深く水深500mほどであるという。温帯域の魚で高水温を嫌うのかもしれない。以前紹介した個体は沖合底曳網で漁獲されたもので、このほかにも小型底曳網や釣り、延縄漁業などで漁獲されている。今回の長崎産の個体は釣りで漁獲されたもので鰭がきれいである。以西底曳網漁業では今回は見られなかったが、以前に見たことがある。

アラはさすがは高級魚、大変美味であった。ただし体調不良のときに食したので、写真に撮っていなかったのが残念。今回のアラも長崎県の石田拓治さんに競ってもらい入手したもの。いつもありがとうございます。

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ヒラマサ

2023年10月13日 18時31分05秒 | 魚紹介

今日は短くいきます。

アジという名前は味がいいからとされる。実際にアジ科の魚はみな美味しいのだが(一部例外もある)、個人的にトップ3を挙げると、アンダマンアジ、ムロアジ、そしてこのヒラマサであろう。昨年に鹿児島の「めっけもん」でヒラマサを食べたのだが非常に美味であった。本州~九州に多く住むブリ属の3種の中ではブリやカンパチは(養殖物であるが)食する機会が多いのに対し、このヒラマサは食する機会が少ない魚の一つである。スーパーではブリもカンパチもサクで売られているが、ヒラマサのサクはなかなか見たことがない(少なくともこの辺では)。ブリとヒラマサの2種は上顎の形、胸鰭と腹鰭の大きさ、胸鰭と体側の黄色線の位置関係などで見分けられるのだが、ブリの大きいののいい写真がないので、これについてはまた今度。今回の長崎魚市場では巨大なヒラマサも発見していたが、ちょっと痩せていた。そのためやや小ぶりなものを石田拓治さんに落としてもらった。

さて、ヒラマサの刺身。「めっけもん」で出たヒラマサの寿司ほどきれいではないが、身の色がピンクできれい。味は脂は少ないのだが、養殖のように脂っこいものではないのでよい。大変に美味な魚である。今回も長崎県 石田拓治さんより。いつもありがとうございます。

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フエフキダイ

2023年10月11日 02時28分23秒 | 魚紹介

さて、以前ハマフエフキのときにちょっとばかりふれていたものを。フエフキダイ科・フエフキダイ属のフエフキダイ。フエフキダイはハマフエフキと異なり、太平洋岸ではあまり見られないが、標準和名で「無印」的なフエフキダイといえば本種である。タイプ産地は南方系のフエフキダイ属では珍しく日本である(ファウナヤポニカより)。ハマフエフキやイトフエフキも日本でよく見られるフエフキダイ属ではあるが、それらはそれぞれ紅海とインドネシア?である。ほかに日本産のものをタイプ標本とするフエフキダイ属の魚で、現在有効な学名を付されているのは沖縄をタイプ産地とするホオアカクチビくらいだろうか。英語名Chinese emperorで「中国皇帝」と格好いい。分布域は狭く日本の主に新潟県・神奈川県三崎以南(青森県などでも漁獲される)、東シナ海沿岸にすむ。琉球列島では少ないと思われ、下瀬 環氏の「沖縄さかな図鑑」にも載っていない。一応「魚類写真資料データベース」では沖縄島産(とされる)個体も掲載されるが、沖縄の市場では九州からの便もあるらしくその産地についてはどうだろうか。海外では台湾、韓国、中国、香港、東沙、南沙なので、東アジア大陸棚の固有種といえよう。

フエフキダイのこのぶろぐ登場も随分ご無沙汰であった。以前にも長崎県産のものを食しているがそれはちょうど10年も前のことであった。前回ぶろぐで紹介した個体は体側に目立つ模様がなかったが、今回の個体には薄い暗色斑が見られる。実は前回2個体我が家にやってきており、もう1個体には暗色斑があった。もっともこの模様は明瞭なものではなく、薄く消えてしまいやすい。魚類写真資料データベースの中にもこの暗色斑があるものとないものが見られる。幼魚にもこの暗色斑がでることがある。福岡県津屋崎の海では夏の終わり~秋にかけて、スズメダイ科の死滅回遊魚などとともに採集された。

胸鰭の上方は白色で、ハマフエフキとは異なっている。生きているときはさえない色をしている。ただし標本によっては白くないものもいるようである。また胸鰭基部内側にはやはり鱗がない。この件については前回も記述したので今回はパス。

頭部の模様もハマフエフキと異なり、青い模様は入っておらず、シンプルな褐色である。フエフキダイ属の魚類は前鰓蓋骨よりも前方に鱗がない。

一方こちらはオキフエダイ(フエダイ科・フエダイ属)。オキフエダイなどフエダイ属魚類は名前こそフエフキダイ類に似ているのだ前鰓蓋骨より前方にも鱗があるので、フエフキダイ属魚類と見分けることができる。ただしフエフキダイ科であっても、メイチダイなどには前鰓蓋骨より前方にも鱗があるので注意が必要である。

フエフキダイは東シナ海では多く見られるが、黒潮流域には少ないイメージがある。おそらくそういうところではハマフエフキやホオアカクチビ、あるいはイソフエフキなどのライバルも多いのだろうと思われる。長崎ではライバルが少なく本種も強い勢力を維持できているのだろう。日本海・東シナ海では釣りや各種網によって漁獲されており、今回の個体は五島列島の定置網でメイチダイの混じりで入手したものである。底曳網漁業でも漁獲され、以西底曳網によって漁獲された個体も入手したことがある。

今回のフエフキダイは刺身で美味しくいただいた。石田拓治さんより。いつもありがとうございます。

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インスタへのリンク画像を貼ってばかりのサイトってどうよ?

2023年10月08日 14時12分18秒 | 魚類とインターネット
どうもこんにちは。栃木県某所の朝が寒くてたまらない椎名さんです。
 
さて、最近思うことがある。
サイトのコンテンツにインスタグラム(以下、インスタ)へのリンク画像をペタペタ貼り付けるようなサイトがやたらと目につくのである。具体的なサイトの名前をあげると「暮らしーの」などである。ただ、同じような、飼育していない魚などを飼育しているように見せかけているサイトも逝ってよし(何年ぶりに使ったんだろう)。
 
ニシシマドジョウ
 
暮らしーの」はインスタへのリンクで図鑑サイトとしての体を保っているようだが、サムネイルだけはインスタへのリンクを貼って誤魔化す手法は使うことができない仕様になっているらしい。したがってサムネイルだけは自分で撮影した画像、であるはずもなく、さまざまな図鑑サイトからの無断転載であふれている。もっともこのサイトはライターが多数おり、個々の記事は別人が書いている。おそらくサムネイル画像もライターが用意しているのだろう。あるライターは魚の記事をいくつか書いているが、そのサムネイル画像は某図鑑サイトからのパクリばかりである。以前一緒に和歌山県方面へ採集に行った某氏のシマドジョウ類(湖産ニシシマドジョウか、オオシマドジョウ)のサムネイルまで貼ってあり、うーん、あんたいったい彼のなんなのさ。
 
キタマクラ
 
しかし中身は完全なオリジナルである。この手のサイトの常として、おもにwikipediaからパクるということがあるが、流石にwikipediaでも、アマダイやイシダイはタイの仲間、と書いたりはしていないはずである。他にも意味不明な記述あり、同じ魚の記事が2〜3個もあったり、果てはキタマクラを食べたりするアブナイ記事を掲載するなど、サイト運営者がチェックしていないのが明らかである。キタマクラは筋肉に毒はないとされるが皮に毒があるため、(すくなくともふぐ条例のある県では)食用禁止ふぐに入れられているはずである。魚図鑑なんてYMYL(金や健康などのような生活に大きな影響を与える、記事作成については慎重にすべきサイト)ではないなんて言っている人たちは本当にそうか考えてみてほしいところ。
 
そしてそもそも、インスタの投稿をペタペタ貼って作ったコンテンツ、権利的に問題はないのだろうか。一応インスタから引っ張ってきたものであることが明らかにわかるため引用基準は満たしているのかもしれないが、オリジナルの要素がほとんどない。これでは「いつか来た道」、つまりNAVERまとめ、あるいは某プロ野球球団運営のキュレーションメディアと変わるところがない。そしてこれらはいずれも故人である(前者享年10歳、後者享年1歳くらい)。というか、このようなインスタや画像素材サイトから引っ張ってきた画像ばかりのサイトはそろそろすべて焼き払われるべきだろう。
 
なお、私はインスタはやっていないので画像を使用されることはない。したがってこういうので写真が勝手に使われるなんていうこともない。というか、私の撮影した写真や画像ならばこのぶろぐから勝手に引用()しているだけであろう。神奈川県の某水槽レンタルサービスみたいに。なお、魚の写真と内容は関係がない。
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ハマフエフキ

2023年10月07日 14時48分29秒 | 魚紹介

このぶろぐに久しぶりに登場。スズキ目・フエフキダイ科・フエフキダイ属のハマフエフキ。

2010年ごろ1回このぶろぐで大型の個体を紹介したことがあったのだがそれ以来の登場になるだろうか。小ぶりの個体はその後に何回か見ており、大きめの個体も食してはいるがあまりきれいなものではなく紹介してこなかった。今回のハマフエフキは長崎の五島列島近海の定置網に入ったもの。全長30cmほどとお手頃かつ美味しいサイズである。このときの五島列島の定置網はスゴかった。なんといっても台風接近中でメイチダイが大量に入って来たのだ。そしてメイチダイだけでなく、このハマフエフキもちらほら。超えたイトフエフキ、そして次回ご紹介する予定の魚(でも、もうわかっちゃいますよね)、長崎県でふつうにみられるフエフキダイ属の魚が勢ぞろいというわけである。

ハマフエフキは英語名でSpangled emperorという。体側に輝く青白点をスパンコールに見立てたものであろう。emperorはフエフキダイ亜科の総称である。もう1つの亜科であるメイチダイ亜科はLarge-eye-breamだとかBig-eye breamと呼ばれることが多い。たしかにタイ科の多くの種と比べると眼が大きいように思える。

ちょっと話はずれてしまったが、ハマフエフキの体側には青白い斑点が多数ある。マダイなどのようにきらっとしたものではないが、それなりに美しい。また胸鰭にも青い線があり、これらの模様によってほかのフエフキダイ属魚類と見分けることができる。

ハマフエフキのもうひとつの特徴は、胸鰭をめくったところの鱗の有無である。ハマフエフキはこの部分に鱗がある。ほかにもイトフエフキやハナフエフキ、アマミフエフキなどの種にはこの鱗があるが、ハマフエフキ同様温帯に多いフエフキダイや、たまにハマフエフキと間違えられるシモフリフエフキではこの部分に鱗が見られない。

ハマフエフキはフエフキダイ科の中でも特に重要な食用魚であり、刺身など非常に美味である。また夜釣りの対象魚としてもお馴染みである。今回のハマフエフキも長崎の石田拓治さんより。いつもありがとうございます。

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