この間フエフキダイ(2013年以来)、ハマフエフキ(2009年以来)、とご無沙汰だった魚を紹介してきたのだが、この魚の紹介も久しぶりである。アラという深海性魚類の一種。
2009年に入手した個体
今回入手したアラの尾鰭
アラは2009年、沖合底曳網漁業の有限会社昭和水産 海幸丸に乗せて頂いたときに漁獲された魚を紹介した時以来の登場となる。そのときは白っぽい体に黒い線が入る個体を紹介していたのだがこれは幼魚の色彩であり、成長すると灰色の地味な色彩の魚になってしまう。ただし、尾鰭の上・下端が白いのは成魚でもかわらない特徴である。むしろ尾鰭の白い模様は成魚ではよりはっきりとしている(ように見える)。この個体は全長465mm、体長383mmであるが、もっと大きくなる。80cm~メーター近くにもなるという。
アラは従来スズキ科とされてきた。しかしその後はハタ科の中に含められたり、いや、ハタ科には含められないといわれたりしてきた。ここ何年かはアラはハタ科ではなく1科1属1種のアラ科に落ち着いているようである。前鰓蓋隅角部に大きな棘があり、これによりハタ科と見分けられるようである。また普通のハタ科は背鰭棘数が11以下であることが多いのに対してアラは背鰭が13棘であるのも特徴らしい。なお、九州で「あら」といえばハタ科のクエのことを指すため注意が必要。クエのような巨大なものは少ないが、アラもメーター近くにまで成長し、今回購入した魚の中では最も高級な魚であった。分布域は広く、北海道太平洋岸・青森県日本海岸~九州南部、東シナ海、まれに瀬戸内海、海外では韓国、台湾、スル海にすむとされるが、このほか「沖縄さかな図鑑」においては琉球列島でも釣獲された個体が掲載されている。生息水深はマチ(ハマダイなどの遊泳性フエダイ類)よりも深く水深500mほどであるという。温帯域の魚で高水温を嫌うのかもしれない。以前紹介した個体は沖合底曳網で漁獲されたもので、このほかにも小型底曳網や釣り、延縄漁業などで漁獲されている。今回の長崎産の個体は釣りで漁獲されたもので鰭がきれいである。以西底曳網漁業では今回は見られなかったが、以前に見たことがある。
アラはさすがは高級魚、大変美味であった。ただし体調不良のときに食したので、写真に撮っていなかったのが残念。今回のアラも長崎県の石田拓治さんに競ってもらい入手したもの。いつもありがとうございます。