魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

ツマグロアナゴ

2023年05月24日 02時17分48秒 | 魚紹介

このアナゴはツマグロアナゴという。前回ご紹介したアイアナゴと近縁な種ではあるのだが、アイアナゴよりはどこか優しい顔をしている(ような気がする)。

ツマグロアナゴもやはり中深海~深海に生息するアナゴの一種で、この個体も水深200mほどの海底をひく、とんとこ漁で漁獲された「うんまか深海魚」のひとつ。分類学的にはアナゴ科・クロアナゴ亜科・ツマグロアナゴ属で、アイアナゴ属のアイアナゴとは別属であるが、アイアナゴとよく似ている。ツマグロアナゴ属の魚は三大洋から20種ほどが知られ、日本にはそのうちの2種が知られているがBathycongrus melanostomusなど、台湾近辺やベトナムなどに生息する種が近年新種されていたりして、それらが日本近海にまで分布を広げている可能性も高い。そのため日本産のこの属の魚も今後再検討が必要といえるだろう。

ツマグロアナゴの上顎

アイアナゴの上顎

ツマグロアナゴとアイアナゴの見分けは外見からはなかなか難しいが、主に口腔内の鋤骨歯を見るとよい。ツマグロアナゴは鋤骨歯の歯列が短いが、アイアナゴでは細長く1列であることにより見分けられる。ミナミアナゴやキツネアナゴなどにも似ているが、本種では歯が大きいことによって見分けることができる。またツマグロアナゴでは背鰭・臀鰭の後方縁辺が黒っぽくなるというのが特徴で名前の由来にもなっているが、アイアナゴでも薄く黒っぽくなっていたりするのであまり有効な見分け方とはならないようである。日本産のツマグロアナゴ属のもう1種、ニセツマグロアナゴとは肛門前の側線孔の数で見分けられる。本種はやや少なくその数は30~38であり、40~44のニセツマグロアナゴと見分けることが可能だが、見慣れていないと難しい。

「魚類検索」では本種の生息水深は296~304mで漁獲されている、という。しかし本種はより浅い水深200mほどの海底で漁獲された。おそらくアイアナゴと同様にあまり漁獲されることがなくほかのアナゴ科魚類と混同されやすく情報があまりそろっていなかったのかもしれない。分布域は茨城県の鹿島灘~鹿児島県南部に至り、海外でも朝鮮半島から西太平洋、オーストラリアにまでその分布域が及ぶとされる。ただ一部は再検討の余地があるだろう。この種もアイアナゴと同じく唐揚げや煮アナゴで美味であった。アイアナゴと一緒に調理したもので、写真もアイアナゴのときの使いまわし。鹿児島市場 田中水産 田中積さん、いつもありがとうございます。

コメント
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