3日ぶりに魚の話題を。スズキ目・トクビレ科・ツノシャチウオ属のアツモリウオ。これは最近入手したものではなく、2020年の夏にいただいたものである。
アツモリウオの頭部、吻の先端には肉質のひげがある。これはこの属の日本産種であればどの種も持っている。ただしこのひげは個体によって変異があるとされる。とてもユニークな顔つきである。
眼の上にも大きな棘があり、その棘のすぐ後方にも小さな棘が見られる。この小さな棘の有無は近縁種のひとつであるクマガイウオと見分けるための特徴のひとつであるといえる。
近縁種クマガイウオ
アツモリウオと同じツノシャチウオ属の魚は日本近海からは4種が知られている。ツノシャチウオ、トンガリシャチウオ、クマガイウオ、そしてこのアツモリウオである。前二者は胸鰭下部の軟条が遊離する(鰭膜がない)のに対し、クマガイウオとアツモリウオは胸鰭下部の軟条にも鰭膜があり、軟条が遊離しないという特徴がある。クマガイウオは上記の眼の上の棘の特徴のほか、体側の側線に黒くて明瞭な縦線があることにより、体側に明瞭な黒い線のないアツモリウオと見分けることができる。この仲間の魚は北日本の浅い海~水深100mを超える海底に生息しており、刺網や底曳網などで漁獲される。この属のうちツノシャチウオは北海道太平洋岸西部や東北地方、新潟県で、トンガリシャチウオは北海道猿払、日本海沿岸に見られるが、アツモリウオとクマガイウオは北海道全沿岸、東北地方においても幅広く見られるほか、南は島根県隠岐諸島付近にまで見られるという。
アツモリウオは刺網や底曳網漁業などで漁獲されているものの、食用になることはほとんどない。しかし同科のトクビレは北海道では重要な食用魚で、イヌゴチやシチロウウオも食したが美味であった。今回はアツモリウオも食べてみた。食べ方は塩焼き。キホウボウなどよりも体を覆う鎧のような骨板はやわらかく、噛めなくもない。骨板ごと焼いて骨板ごと食べたがなかなか美味であった。水族館では北海道の海を再現した水槽にいるのをよく見る。家庭の水槽で飼育できないこともないが、水温は12℃くらいと低めに保つ必要があるだろう。そのためクマノミ類など熱帯性海水魚との飼育は不可。
今回のアツモリウオは北海道の「ぽむ」さんからいただいたもの。ありがとうございました。
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