2日連続でディープな魚を。
ワニトカゲギス目・ムネエソ科・ホウネンエソ属のノコバホウネンエソ。
ムネエソ科の魚は発光器をもち、ユニークな体の形から深海魚の中でもよくしられている種。その中のホウネンエソ属の魚は日本からは8種類がしられているが、大きく二つのグループに分けられる。ひとつめのグループは後側頭骨棘が大きく、いくつかに分岐しているもの。もう一つのグループは後側頭骨棘が小さく、単一の棘をもつもの。前者にはツノホウネンエソ、カタホウネンエソ、マルホウネンエソが含まれ、後者のグループにはホシホウネンエソ、スルガホウネンエソ、ミツユビホウネンエソと、2014年に与論島から日本初記録種として報告されたチュラプシホウネンエソが含まれている。
ノコバホウネンエソも後側頭骨棘が大きく分岐している。ということは、ツノホウネンエソやカタホウネンエソなどと同じグループに含まれる魚である。
ノコバホウネンエソの特徴は、臀鰭後方と尾鰭にある発光器(尾柄下部発光器、SC)の下方に鋸歯があること、これが標準和名の由来であろう。今回送っていただいた個体ではよく確認できなかったが、この魚をおくっていただいた「たつろー」さんがTwitterにアップしてくれていた。本当に助かった。発光器の分布もホウネンエソ属の種ごとに違いがある。生きているものはまだ見たことはないのだが、光る様子はまさしくチュラプシホウネンエソの名前の由来となった「美ら星」のようにきれいであろう。
分布域は相模湾から宮崎県の太平洋岸、海外ではフィリピン近海に分布しているようである。日本の太平洋岸近辺には本種やカタホウネンエソ、ホシホウネンエソ、スルガホウネンエソ、ミツユビホウネンエソが見られる。大陸棚の縁辺に生息し、外洋の中深層に生息するムネエソ属やテンガンムネエソ属の魚に比べてまだ我々が出会うチャンスが高い種、といえそうである。この個体は愛知県を拠点とする底曳網漁船が採集したもので、シャチブリなどと一緒に入っていたのをHN「たつろー」さんに送っていただいたもの。ありがとうございました。
ちなみにノコバホウネンエソと出会うのは実は今回が初めてではない。2010年にとあるところから譲っていただいた魚の中に、この魚が入っていたのだ。今回は7年ぶりの再会となった。前回は宮崎県の延岡沖で漁獲されたもので、その中にノコバホウネンエソが1匹入っていたのだ。それが私にとって初めてとなるホウネンエソ属魚類との出会いとなった。
ムネエソ科魚類はこれまでもキュウリエソ、ムネエソ、テンガンムネエソなど見てきた。しかしホウネンエソ属魚類は延岡のものと、今回の計2回、しかも同じ種しか見ていない。できることならもっといろいろなホウネンエソ属魚類が見てみたいものだ。このぶろぐを見てくださっている漁師の皆様、よろしくお願いいたします。
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