チョウチョウウオ科・ハタタテダイ属のムレハタタテダイはこれまでもこのぶろぐでは登場していたのだが、詳しくは紹介できていなかった。ということで今回はムレハタタテダイのご紹介。
ムレハタタテダイはインドー太平洋に広く分布している。また紅海やハワイ諸島にも分布しているのは本種らしい。日本ではどちらもその姿を見ることができるが、単独でいるのはハタタテダイのほうが多いような気がする。ただし手元のハワイの魚の本(Jordan and Evermann,1903/1973)にはハタタテダイの学名で掲載されている。ムレハタタテダイはその後に再記載されたのである。日本国内では千葉県以南の太平洋岸、山口県、長崎県、琉球列島、八丈島、小笠原諸島で見られる。
ハタタテダイ
ハタタテダイとの見分け方はいくつかあるが、有名なものは背鰭の棘条数である。ハタタテダイは背鰭棘がふつう11なのに対し、ムレハタタテダイではふつう12~13棘である。吻もハタタテダイのほうがよくのびる。さらにムレハタタテダイでは胸部が膨らむなどの特徴もある。ただしこの2種を見分けるのは初心者ではむずかしい。ある程度の数を見る必要がある。そして、適切な「指導者」の存在も。私は「適切な指導者」が2007年まで某サイトにおられたし、しっかり背鰭棘を計測することで覚えたのであった。
群れをつくるムレハタタテダイ
生態も異なっている。ハタタテダイは単独または数匹でサンゴ礁で小型の甲殻類を啄むように思えるが、ムレハタタテダイは大群を作りプランクトンなどを食っているように思える。実際にハタタテダイはなかなか釣れなかったが、ムレハタタテダイは漁港でオキアミを餌にするとすぐに釣れてきた。餌付きもよく飼育は簡単だというが、白点病になりやすいことや、サンゴをつつく可能性もあるため、なかなか飼育に踏み切れない。以前飼育していたが白点病に罹って死なせてしまった。定置網ではムレハタタテダイが時に多く網に入ることがあり、これを水族館に送って飼育されているケースもある。
ツノダシ
なおハタタテダイ・ムレハタタテダイによく似た魚にツノダシという魚がいる。ハタタテダイ属魚類に非常によく似た見た目をしているが、分類学的にはニザダイに近いとされている(もっとも、チョウチョウウオ科もニザダイに近いという意見もあるが)。ハタタテダイ・ムレハタタテダイともに尾鰭は黄色であり、尾鰭が黒いツノダシとは容易に見分けられる。ツノダシは単独でいることもあるが、産卵期などは大群をつくることもある。
ムレハタタテダイの塩焼き
ムレハタタテダイはいちど食したことがある。このときは小笠原諸島で獲れたものを山田良一さんに送っていただいたのだが、かなり大きいものだったので食してみた。塩焼きにすると皮目が厚くて気になったが、身自体は美味しく食することができた。山田良一さん、ありがとうございます。
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