久しぶりに過去に出会った魚のアップ。スズキ目・カワビシャ科・ツボダイ属のツボダイ。
ツボダイ属の魚は世界に4種ほどが知られているが、日本産のツボダイ属魚類は本種のみの1属1種。鰭が極端に長くなく、臀鰭棘数の多いツボダイの仲間はクサカリツボダイが知られている。クサカリツボダイについては、以前にもこのぶろぐで紹介している。
クサカリツボダイ
ツボダイはクサカリツボダイと比べて体系がやや高めで寸詰まり。また背鰭棘数にも違いがあり、ツボダイは普通11棘だが、クサカリツボダイの背鰭棘数は13~14とやや多めである。
ツボダイの背鰭
クサカリツボダイの背鰭
ツボダイもクサカリツボダイと同様に、底曳網や深海の釣りで漁獲されるタイプの種。しかし以前にも述べたようにスーパーで「つぼ鯛」の名前で販売されているのはツボダイではなくクサカリツボダイであることが多い。ツボダイは市場などではよく見られるがあまりポピュラーな魚ではない。分布域は広く北海道から九州-パラオ海嶺までの太平洋の深海、日本海西部、朝鮮半島、中国、ハワイ諸島にかけて分布している。私は八幡浜のトロール漁業で混獲されたのを見ているほか、宮崎県産のものも見ている。
最近は水族館でも「深海魚ブーム」であり、タカアシガニやユメカサゴとともに本種が飼育されているケースがある。水深100m以深、深いところでは900mほどの場所にまで見られるという。
●チョウセンバカマ
ツボダイと間違えられることが多い魚に、チョウセンバカマという魚がいる。
ツボダイ臀鰭
チョウセンバカマ臀鰭
ツボダイとチョウセンバカマの見分け方はいろいろあるが、一番わかりやすいのは臀鰭をみることだろう。チョウセンバカマの臀鰭棘は3棘だが、ツボダイでは4~5棘ある。またチョウセンバカマの体側には縞模様があったりするが、そのような模様の入ったツボダイの大型個体については見たことがない。ちなみにチョウセンバカマは1科1属1種とされていたが、今年にはいってチョウセンバカマのオーストラリア産のものが亜種とされたり、2新種が記載されるなどしている。オーストラリア産に限らず日本で「チョウセンバカマ」とされている個体も2タイプがあるように見えるのだが...。
この記事を書いたことによりカワビシャ、テングダイ、クサカリツボダイ、そしてツボダイと、日本に生息するカワビシャ科4種すべてについて記事を書いたことになった。中央の魚がチョウセンバカマ。カワビシャ科ではないのだが、よく似ているので比較のために。一見よく似た魚でもじっと見ていれば別の種のように見えてくる。なお右上から時計回りに、カワビシャ、テングダイ、クサカリツボダイ、ツボダイ。
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