黒いスズメダイ科魚類はどの種類も同定することは難しいものです。この黒いスズメダイは、両顎の顎歯列の様子(明らかに2列のところがある)こと、鰓耙数が上が5、下が10前後であることなどからソラスズメダイ属になると思います。
そのスズメダイの頭部です。写真からは全くわかりませんが、眼下骨下縁には鋸歯のようになっている突起があります。眼下骨上には鱗はありませんでした。
鋸歯突起の形状については粗く並び、スミゾメスズメダイのそれとよく似ています。
こちらは、本種の尾鰭。一様に暗色です。
胸鰭の模様も、黒いスズメダイの仲間を同定するのに重要なキーとなります。このスズメダイは、胸鰭の上部にかかる薄い黒い斑紋があるのですが、あまりめだちません。
胸鰭基部に目立つ斑紋があり、かつ暗色のスズメダイ、といえばナガサキスズメダイがいますが、ナガサキスズメダイは尾鰭に淡色線が入ることが特徴的です。あまり目立たないものとしてはミナミイソスズメダイなどがありますが、ミナミイソスズメダイの場合、眼下骨下縁の鋸歯は密であるなどの特徴により、区別できます。
これらの特徴を、インド・太平洋海域に生息するソラスズメダイの仲間に当てはめてみても、似ているものがおおく分類再検討が必要な種もいるので、何とも言えなくなってしまっているのが現状です。簡単にいえば、「私には同定できない」ということです。
スミゾメスズメダイPomacentrus taeniometopon Bleeker, 1852と比較
昔撮影したスミゾメスズメダイです。スミゾメスズメダイの特徴は背鰭後縁や尾鰭が黄色っぽくなることですが、本種にはそれは見られません。また鰓耙数もスミゾメスズメダイはやや少ないようです。鰓耙については、餌の種類やとりかたに関係があるといわれており、プランクトンを捕食する魚は多く、付着藻類などをついばむスミゾメスズメダイのような魚は少なくなるようです。