2020/9/1放送
世の光の時間です。いかがお過ごしですか。板倉邦雄です。今日は「この道についての騒動 その2」と題してお話ししましょう。
騒動の発端は小アジア・エペソでの宣教活動にありました。エペソ市の守護神大女神アルテミス神殿の模型を作って商売をし儲けていた銀細工人たちの売り上げが落ちてきたからです。アルテミスを崇拝していた多くの人々が「この道」であるキリスト教徒になったからです。
さてエペソ市の2万人以上集まることのできる講堂は溢れかえりました。集会は大混乱です。集まった人々は勝手に叫び続け怒鳴り続け、大多数の者は何のために集まった集会だかわかりませんでした。しばしば騒動とか暴動とはやじ馬の集まりになってしまうのですねえ。
「大いなるかなエペソ人のアルテミス!」と群衆は2時間ばかり叫び続けました。
そこで 遂にエペソ市の書記官が登場し、人々の叫びを押し静めて言いました。
「エペソの諸君。エペソ市が大女神アルテミスと天から降った御神体との守護役であることを知らない者が一人でもいるだろうか。これは否定できない事実であるから諸君はよろしく静かにしているべきで乱暴な行動は一切してはならない。諸君は「この道」の人たちをここに引っ張ってきたが、彼らはアルテミス神殿を荒らす者でも私たちの女神をそしる者でもない。だから、誰かに対して訴え事であるなら正式な裁判の日もあるしローマ総督もいるのだから、それぞれ訴え出るが良い。今日の事件についてはこの騒ぎを弁護できるような理由は全くない。だから、私たちは治安を乱す罪に問われる恐れがある。」
こう言って彼はこの集会を解散させたのです。
このエペソ市の書記官の説得からいくつかの大切なことがわかりますねえ。第一に、誰にでも宗教を信じる自由があり、他の宗教を非難したり相手の心を侵害してはならないという点です。第二に、いかなる理由があろうと暴力や暴動の行動に訴え出て社会を乱すことは罪に問われるということです。第三に、何か不当なことや不満があれば正式な裁判に訴え出ることですねえ。そしてこの書記官は大切な心の問題である宗教を金儲けの手段にするな、と痛烈に非難しているのではないでしょうか。
(PBA制作「世の光」2020.9.1放送でのお話より )
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