花の四日市スワマエ商店街

表参道スワマエ商店街会長のひとり愚痴

貸本屋の時代④ つげ義春

2024年08月26日 | レモン色の町

貸本時代の“隣室の男”と“クロ”は、盗作と呼ぶに近い作品だった。

昭和31年“影”第1集 日の丸文庫発行に掲載の『隣室の男』松本正彦 画は、小学校時代に貸本屋で見た記憶が、確かにあった。懐かしい!

平和アパートに住む漫画家青年“堅戸”の隣室には、空襲で家族を亡くした“仁市”という男が一人で住んでいた。仁市は、クロという猫を飼っていた。ある日、アパート向かいの禿野という親父の部屋の金魚が、クロに襲われる。それを見つけた禿野は、クロを猟銃で撃ち殺してしまった。その日の午後、午睡をしていた禿野は猟銃の暴発で死んでしまう。青年“堅戸”は“仁市”を疑うが、実は、金魚鉢にあたった太陽の光がレンズの役目をして飾ってあった猟銃に焦点が合い暴発したという事だった。

松本正彦”隣室の男”昭和31年

そんなにうまいこと行くか?てなものだが、小学生の自分には充分納得ができた。実は、禿野の死因は脳溢血で、仁市は漫画家青年が思っているような悪ではなかったという落ちがつく訳だが、昭和34年、つげ義春が“迷路9”に掲載した『クロ』の雰囲気が 似ていた。

兄は、父親が可愛がっていた猫の“クロ”を、父親の猟銃で撃ち殺そうとする。怒った父親は、それがショックで脳溢血になり死ぬ。葬儀の晩、兄は暴れるクロを、父親の棺桶に入れて蓋をしてしまう。火葬場からの帰り、タクシーの前を走るクロの姿に、兄は化けて出たのだと恐怖する。実は、母親が秘かに棺桶から取り出したのだった。あきらかにつげ義春は、松本正彦の作品を参考にしている。

つげ義春”クロ”昭和34年

つげ義春は、作品“クロ”について投稿欄で答えている。ミステリー物からずれてしまったと認める作者は「こういうものしか描けなかった」と繰り返すばかりだったそうである。

生活の為に 膨大な作品を生み出さねばならなかった 貸し本時代の出来事だった