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無駄ながらかわいい日本産娯楽製品の戦後史

2021-11-09 13:54:06 | 読書ノート
マット・アルト『新ジャポニズム産業史 1945-2020』村井章子訳, 日経BP社, 2021.

 「サブカル史」とするとちょっと違う。「海外の消費者を魅了する、玩具・アニメ・漫画・ゲーム・カラオケほか日本産娯楽の戦後史」とするべき内容である。著者は日本在住の米国人で、その種の製品の紹介者でかつ翻訳家であるとのこと。原書はPure invention: how Japan's pop culture conquered the world (Crown, 2020)である。

  始まりはブリキのおもちゃから。終戦後、米軍のジープをかたどった玩具が大ヒットしたという。その後、カラオケの開発と普及、サンリオやソニーの商品開発と展開、任天堂ほかのゲーム産業、たまごっち、米国4chanに模倣された掲示板である2ちゃんねるなど、米国でも普及したさまざまなキャラクターや製品が議論の俎上にのる。アニメや漫画への言及もあるが、あくまでも米国での視点から。例えば、アニメ史ではあまり言及されない作品ながら『ポケモン』は米国中の子どもがハマった作品として本書では重視されている。それぞれビジネスモデルや収益構造にも気を配った記述で、成功要因を気まぐれな流行だけに帰していない。

  昭和生まれの人間としては懐かしい話もあったが、あらためて知ったことも多い。カラオケの発明秘話や通信カラオケの開発、ゲームを作っている企業の出自、とりわけビデオゲームについては後発だった任天堂の思想などは興味深い。商売人としての嗅覚を鍛える本として、サブカル愛好家よりビジネスマンにとって面白いのではないだろうか。
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