「百番」の続きです。
写真を見て頂くとわかるのですが、緋毛氈の敷かれた廊下、赤・黒・金の色も鮮やかな贅を尽くした襖絵・欄間などの細部装飾の数々。美しい床の間や付け書院、多彩な天井(格天井あり、花あり、龍あり、船底あり)、中庭&巨石ありと、じっくり見出すと最低でも半日くらいはかかりそう、細部装飾を1つ1つ丹念に見ると、丸1日かかりそう&次から次へと発見がありそうな感じでした。いやはや凄い・・・絶句です。
豪華絢爛で濃密な空間は、太鼓橋を渡ることによって俗世界から別天地(神の世界?非日常的空間?)に身を移して味わえるものだったようです。中庭にはなかなかエロチックな巨石があるのですが、まず巨石を設置し、その後周りに建物を建てていったとのことです。この中庭の風情がまた良い感じでした。
↓控えの間(?)であった「日光の間」です。日光東照宮を模した「陽明門」、「眠り猫」が我々を出迎え、内部には「天女飛翔図」や「雲竜図」の天井画などがあり、ここだけでも見どころいっぱいです。
↓「清浄殿」と名付けられた1階のトイレ(男女兼用)です。扉まわりも凄いのですが、このカラフルな内部の天井画にはビックリ!
2階は小部屋も多数あります。2階の部屋の中では、見事な折り上げ格天井を持つ「由良の間」が圧巻でした。「桃山殿」とはまた異なった趣の贅をこらしたお部屋です。ここも宴会で使えるのでしょうか?次はこの部屋で食事を頂きたいものです。
ちょっと不思議なテイストの華頭窓ですね。
百番には、富士山あり、厳島神社あり、日光あり、京都あり、住吉神社(太鼓橋)ありと全国めぐりができるのが面白いです。
絵や彫刻、各種建具の作者などは不明とのことですが、かなり腕の立つ絵師や彫刻師が腕をふるったことは間違いなさそうです。全体的に模倣やパロディなども多くキッチュとも言えますが、ここまで本格的&徹底的だと拍手喝采というか、天晴れです。”日光東照宮そのものが、典型的なキッチュの例”として挙げられたりすることもあるみたいですしね。
「百番」は戦後、色々と改装の手が入ったようです。しかし、畳が波打っていたり明らかに床が傾いていたりと傷みが激しいのは間違いありません。建物や建具の傷みを今後どうやっていくかが大きな課題です。
お店は完全予約制ですが、二名から受け付けOKとのことですので、気軽に利用できます。ただし、お店までの道中はなかなかディープなゾーンを通るので注意が必要ですし、部屋は人数に応じたものとなるはずです。我々は寄せ鍋にしたのですが、お料理は美味しく値段もリーズナブルでした。
それにしても「百番」がこんなに凄く、面白いとは!夢のような時間でした。
なお、キッチュについては、Wikipediaにあった説明文の中で、下記のような個所が「百
番」の魅力にも当てはまると思いました。
キッチュ(kitsch)とは、美学・芸術学において、一見、俗悪、異様なもの、
毒々しいもの、下手物などの事物に認められる美的価値である。
キッチュとは、「見る者」が見たこともない異様なものか、「意外な組み
合わせ」「ありえない組み合わせ」であろう。もしくは、「見る者」にとって
異文化に属するものであったり、時代を隔てたりしている必要がある。
「見る者」の日常性に近すぎると、新鮮味のない、陳腐な存在でしかなく、
そもそも注意を引くこともない。キッチュの観点から言えば、「普通」で
あることは、キッチュとしての美的価値が不足していることを意味する。
また、キッチュは、時間的な隔たりという点では、レトロ、懐古趣味と
関連していることがある。