レッドクリフ PartⅠ&PartⅡ
★★★★☆’:85点
なんばパークスシネマで、ジョン・ウー監督が「三国志」を描いた歴史巨編「レッドクリフ PartⅠ&PartⅡ」を観ました(11月と4月)。日本では一般的には吉川英治作品が有名ですが(私もかつて吉川英治版・全8巻を読みました。最近では北方謙三版もありましたね)、登場人物が多く戦いの連続でもある「三国志」の世界をPartⅠ&PartⅡに分けたとはいえ、よくぞ描ききったものです。人間ドラマと戦闘シーンのバランスも良く、素晴らしい作品になったと思います。よく言うのですが、このような大活劇はやはり大スクリーンと最新音響システムを完備した映画館で観ないと&体感しないとダメですね。
【注:以下、ネタバレあり】
結果的には、PartⅠで有名なエピソードを交えながら登場人物を丁寧に描き、PartⅡで「赤壁の戦い」に焦点を絞って迫力ある戦闘シーンを描く2部構成が大成功だったと思います。PartⅡでは人間ドラマ部分はやや短めでしたが、これも決して手抜きをしている訳ではなく、一大決戦を目前にしての緊張・高ぶり、迷い・心の揺れなどPartⅠの記憶とも合わせて印象深いものになっていました。
私がかつて読んだのは吉川英治の「三国志」ですが、今回作品の主人公である周瑜(トニー・レオン)のことは全く覚えていなかったです(汗)。沈着冷静にして豪気もあり、音楽に造詣が深く民にもやさしい。姿形が美しく、妻・小喬は絶世の美女。全てに恵まれた完璧な武将ですね。天才軍師・諸葛亮孔明(金城武)はユーモアがあって飄々とした感じが面白かったです。周瑜と孔明、ライバルではあるものの互いに相手の高い能力を評価し、友情を越えた感情すら持つ。この二人の関係が本作品の最大のみどころでしょうか。
劉備・張飛・関羽・雲長も皆良かったですね。張飛・関羽は原作の持つイメージそのままでしたし、PartⅠで雲長が劉備の息子を守って死地を切り抜ける有名なシーンも素晴らしかったです。周瑜の妻・小喬と孫権の妹・尚香という二人の女性の戦い方も好対照(静と動)で見事。
「三国志」は知略・謀略の応酬が見どころの一つなのですが、劉備・孔明、孫権・周瑜が仕組んだ周到な作戦の見事さよ!孔明が10万本の矢を集めるシーンは軽妙な味わいもあってgood.魯粛のとぼけた味わいも良かったです。孔明と周瑜のやりとりにハラハラしたり、とても重臣に見えなかったですけれど(笑)。
PartⅡの「赤壁の戦い」はメインが火を使う戦いということもあって、夜のシーンがことのほか素晴らしく、漆黒の闇のなかで燃え上がる炎は美しく、迫力がありました。VFX(コンピューターグラフィックスの技術を使用した特殊効果)無しにはこの映画はできなかったとは思います。しかし、人間ドラマや手作り部分がしっかりしていないと素晴らしい映画にはならないので、この映画はそれが見事に噛み合ったと思います。
古いタイプの集団戦・群衆戦は例えば「ロード・オブ・ザ・リング」でもありましたが、何となく洋の東西の違いといったものも感じられて興味深かったです。「レッドクリフ」は敗者の美や死にゆくものへの惜別の情などがよく描かれていたと思います。また、強大な敵に対して連合軍が力を合わせて挑むというスタイルは「ロード・オブ・ザ・リング」でもそうでしたし、古くは「スター・ウォーズ」でもそうだったかな?主要登場人物の殆どが自ら先頭に立って幾倍もの敵と斬り結び、しかも”ダイ・ハード(決して死なない)”的大活躍をするなど突っ込みどころもたくさんありますが、まあこれは「リング」でも同様でしたね。
小喬の美貌に目がくらみ戦機を逃してしまった曹操ですが、彼は彼なりに自国の民のことを思う気持ちがよく表れていました。何故、最後に曹操を追いつめた連合軍が彼の首を討ちとらなかったのか? 朝敵になることを嫌った?ということはないか・・・。誰も勝者ではないの意か?あるいは敵ながら天晴れの意?
原作でどのように描かれていたのでしょう?これも覚えていません。
この映画では孫権の描き方がちょっと浅かったかなという気もします。尚香と曹操軍の兵士とのロマンスは、ほのぼのとして微笑ましいエピソードであり、作品に潤いを与えたものの、ちょっと単純で幼い恋すぎるかなという気も。何せ尚香はPartⅠで劉備を退けたくらいの女性なので。
観賞後、少し時間が経ったせいか、何を書きたかったのか忘れてしまいました。
ですが、この作品、ぜひ映画館で観てください。
P.S.
かつて年賀状のデザインにも「三国志」を用いたことがあります。
(designed by ひろ)