私塾のすすめ-ここから創造が生まれる(ちくま新書)
★★★★☆:90点
齋藤孝、梅田望夫という共に1960年生まれで時代の最先端を行くお二人の共著(対談集)です。非常に面白くて一日で一気読みでした。採点の90点にあまり意味はなく、とにかく面白く読めたということを表しています。
私は最近、共感した部分や特に面白いと感じた部分には付箋(メモパッド)を貼ることが多いのですが、あまりにも貼り付け箇所が多くなりそうで、これは途中であきらめました。「自分探しへの違和感」「志向性の共同体」「空気を作るのがリーダーの役目」「あこがれと習熟」「数あたる、量をこなすことの重要性」「好きな仕事でないとサバイバルできない」「心で読む読書」・・・などなど、全く新しい概念は少ないのかもしれませんが、お二人の経験に裏打ちされた考え方などがとても印象に残りました。特にウェブやブログなどが「志向性の共同体」づくりに大いに役立っており、新たな創造と生き甲斐発見のようなものに結びついているということは、梅田氏の前の著作でも書かれていたのですが、私の回りのごくごく狭い世界でも十分に実感しています。二人とも一見柔らかそうな感じなのですが、実は硬派でホットだということもよく分かりました。齋藤氏の方がより舌鋒鋭い感じでしょうか。
実は齋藤氏の著作は過去1冊しか読んでいません。梅田氏についても、その著作を全部読んだ訳ではないのですが(「ウェブ進化論」「ウェブ人間論」「ウェブ時代をゆく」に続いて4冊目)、自分にとってとても信頼のおける人物と言えます。私淑する等もおこがましくて言えないのですが、考え方・生き方などがとてもしっくりと自分の中に入ってきます。
本書でお二方の「私のロールモデル」「私の座右の書」というコラムがあり、これも興味深く読みました。私の場合、それに該当するものがすっとは出てこないのですが、次のようなことを考えました。
これまで、小説以外の本の書き手として常に信頼できる人物として、近代建築史の藤森照信氏、クラシック音楽評論家の宇野功芳氏、文藝評論家の北上次郎氏が挙げられるのですが、梅田氏もウェブ界のそれに当たると言えます。これらの方々の特徴として、直感を信じる、好きなことに没頭する、軸がぶれない、故に回りの言動や評価に左右されない、言いたいことを分かりやすく表現できる能力に優れている、ユーモア感があるといったことがあります。もちろん、その専門分野が私の好きなことや趣味と一致しているため、しっくりきやすいということがあるのですが、「私の信頼する人物」として紹介しておきます。まあ、これらの方には熱烈な信奉者やファンが多いのですけれど。
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レールのない時代である現代をサバイバルするには、一生学びつづけることが必要だ。では、自分の志向性に合った学びの場をどこに見つけていったらいいのか? 本書は、志ある若者が集った幕末維新期の「私塾」を手がかりに、人を育て、伸ばしていくにはどうしたらいいのかを徹底討論する。過去の偉大な人への「私淑」を可能にするものとして、「本」の役割をとらえなおし、「ブログ空間」を、時空を超えて集うことのできる現代の私塾と位置づける。ウェブ技術を駆使した、数万人が共に学べる近未来の私塾にも言及し、新しい学びの可能性を提示する。
この本は読んでいません。さっそく読みます。ついでに宇野功芳さんもファン。
本の感想にもコメント頂き、ありがとうございます。
齋藤孝、梅田望夫というお二人の話は、その優しそうな表情とは裏腹に刺激的な内容もあり、とても面白いです。この本はぜひお読みください。
私は最近、クラシック・コンサートからは遠ざかり気味なのですが、宇野功芳さんの評には絶大の信頼を置いています。
また時々遊びに来てくださいね。