ひろの東本西走!?

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京都市山科区の旧T邸

2008-05-13 21:37:00 | まち歩き

「関西洋風建築めぐり」講座、5月は京都市山科区にある旧T邸(現K邸)でした。

※講師の先生が書かれた解説文が見あたりません(先生、すみません)。
  仕方がないので色んな資料をあさりながら書きます。

このお宅、京都高等工芸学校(現京都工芸繊維大学)の校長をつとめたT氏の自邸として昭和4年に建てられたものです。設計は、やはり京都高等工芸学校に勤務していた本野精吾で、構造は昨年12月に見学した「天満教会」でも使われていた”中村鎮式コンクリートブロック”を用いたブロック造です。施工は本野に私淑していた岡田清一郎の経営する岡田工務店。岡田氏は本野の横に机を置いて、本野の設計をどう現実のものとして施工するか日夜苦心したそうな。外装材も兼ねている壁はもちろんのことスラブもブロック造だそうで、何と多数ある煙突も全てブロック造です。また、玄関部のコンクリート打ち放し仕上げの円柱や戸袋に用いられているコンクリート製の平板なども昭和初期と考えると実に斬新で驚きです。

旧T邸はその後、K邸となりました。今回、内部については現オーナーの奥さまが色々説明してくださったのですが、建物や家具・建具に対する愛情いっぱい&軽妙洒脱なお話が最高でした。時間が許せば幾らでもお話を聞きたかったですね。

戦後数年間は進駐軍の将校用住宅として接収され、その際、家具に白ペンキを塗りたくられたり、部材を色々剥がされたり壊されたりもしたそうですが、家具はオリジナルのものがかなり残されており大変貴重です。玄関上部の半円状に突き出した部分に置かれていたイスは背が非常に低かったのですが、これは低い視線からの外の見え方を計算したのでしょうか?これらも殆どが(全てが?)本野のデザインのようです。照明器具はスズランの花状のデザインあり、濁りガラス?を用いたものありと多彩でした。食堂にあった大きな長円形のテーブルは、多くの人が座りやすいようにと中央の大きな脚部1つで支える構造で、天板の端に乗らないようによく注意されたとのことでした。

内部は見所いっぱいだったのですが、階段も素晴らしかったです。幅の広い階段の段板(踏み板)はケヤキの1枚もので見事。手すりには微妙にねじれたカーブがついていたり、手すり子がソロバン玉状などユニークでした。照明や階段手すりなどにはセセッションの影響も見受けられるそうです。

このお宅の凄さはなかなか伝わりにくいと思いますが、建築史・建築学的には超がつくほど貴重だとのことでした。

◎参考ブログ:

   ぷにょさんの”まちかど逍遙”
   gipsypapaさんの”レトロな建物を訪ねて”

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K邸(旧T邸)のすぐ裏手には琵琶湖疎水が流れており、国内最古期(M37)のRC造アーチ橋(田辺朔郎+山田忠三)や第一疎水第二隧道入り口部(日比忠彦+田辺朔郎)がありました。共に国指定史跡です。あいにくの雨でしたが、疎水の風景はかえって風情があるとも言えました。天気が良ければもう少し疎水沿いに歩きたかったですね。

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