![otojirou otojirou](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/07/1c/91e4e62058d2cc198734392b460b6a13_s.jpg)
★★★★’:75点
今戸の貸元・恵比寿の芳三郎の名代として、生まれて初めて江戸を離れて旅立つ音次郎。
音次郎の成長物語とも、明るさと軽みのある爽やかな股旅青春ものともいえます。
母およしとの親子の情愛も良し。
また、仁義の切り方や様々なしきたりなど渡世人の世界がわかりやすく描かれていました。
渡世人だけではなく旅で出会う多くの人々が、音次郎の真っ直ぐな人柄、いざというときの勇気、頭の良さ、気っ風の良さに惹かれ心を通わせていく。同宿となった大店の主・鎌倉屋隆之介、佐倉宿の同心・岡野、江戸北町奉行所の与力・寺田たちとの身分・立場・年齢を超えた不思議な心のつながりや同い年である銚子の祥悟郎との友情良し。
道中に音次郎の舎弟となった昌吉と真太郎の年上コンビが傑作で、作品にほどよいユーモア感を与えています。特にとぼけた味のある真太郎には笑わせられます。
芳三郎も気づいていなかった音次郎の良さをしっかりと見抜いていた代貸の源七。
「あれは見かけとは違って、はらがしっかりと据わってやす」
親分にいずれ組を任せると言われた男だけのことはあります。男気もある素晴らしい人物。
他の登場人物もそうですが、どんな世界でも人の上に立ち引っ張っていける人物は立派ということですね。
さてさて全編にさわやかさが溢れているのは好ましいのですが、逆に一度、ラストにほろ苦さの残るような小説も読んでみたいものです。