河原のタンポポ

河原には
春になりかけの風が吹いていた
土手のタンポポはつぼみも出せずに
小刻みに踊っていた

ミホは

あなたは幸せものだね

と言う

なぜ オレが幸せものなのか

と オレは聞かない

ああ

と オレはつぶやきながら

夕暮れの河の渦巻きに飛び込みたくなる

オレは幸せものさ

死にたくなる感情や殺したくなる

感情

が あるもの

ミホは医者
オレより金があり
オレより他人に尊敬され
オレより心が美しい

でも、死にたくなる感情を持てない哀れな女
でも、殺したくなる感情を持てない哀れな女

別れの潮時だな

ミホ

タンポポがつぼみを出せずに

プルプル震えているよ

そんな

河原の夕暮れだった
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

雨が降る
冷たい雨
さびしそうに
誰も居ない野山に降る
泣くな
五月の雨
オレもひとりさ
だから
泣くな

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )