ちょっと休憩・・・・学・研究とは何? 商い・ビジネスとは何?

2010-06-11 10:39:05 | 専門家のありよう
[図版追加 18.31]


  解説文が読みにくいので、末尾に、画と解説文を個別に載せました。[図版追加 18.31]

この画と解説は、1951年に第一刷が出された「講談社版 世界美術大系 第15巻 フランス美術」に載っているもの。
1414~1416年に描かれた「ペリー公のいとも華麗なる時祷書」の「二月の暦」。
解説に書かれているように、12ヶ月の暦のあとに宗教的主題の画が120枚以上も続くという。
解説は、柳 宗玄 氏。
この方の文章は素晴らしい。たとえば、
「・・・中世美術は実験室の美術ではない。それは建築の壁面と取り組みながら自ら生れる形であり、色彩である。さらにそれは、民衆の生活そして信仰の中から自から生れるものでもある。それは床の間の置き物ではなく、実用的必然性を担ったものである。それは手先で起用にひねりだしたものでなく、人間の全生命が籠っている形なのである。・・・」

「二月の暦」とは、季節はずれ、と思われるかもしれません。
久しぶりに手にとって、目にとまったのです。
この本は、半世紀以上も前、ロマネスクと呼ばれる時代の建物や絵画、彫刻などに強く魅かれて購入したもの(当時の値段で2300円。日本育英会の奨学金が2000円/月の頃です)。
今でも変らず新鮮で、強く魅かれます。Architecture Without Architects に魅かれるのと同じです。
とりわけ、世の中が欺瞞と作為に充ちている昨今は新鮮です。だから、目にとまったのかもしれません。    *******************************************************************************************

昨日遭った「欺瞞と作為」の事例

その一
昨日、ある方からのメールに、その方は、例の建築士の3年に一度義務的に受けなければならない講習会に出てきたのですが、講習会のテキストの一画に次の一節がある、と紹介されていました。以下です(因みに私は受けていません。ことによると、資格剥奪も覚悟で受けないかもしれません)。
  「建築基準法の仕様規定に従って設計する場合の、構造設計の中核をなす概念に
  『壁量設計』がある。簡便な方法であるが、これが日本の住宅の耐震性の向上に
  果たした役割は計り知れない。近年の地震で、『新しい建築物には被害は少ない』と
  報道されることがしばしばであるが、それはこの壁量設計の成果といえる」

その二
例の、「倒壊した『三階建て長期優良住宅』」の「報告」がやっと出されました。
それによると、「倒壊した原因は断言できない」とのこと。
その一方で、実験での入力状況など、実験の「正当性」ついて、延々と書いている。

その三
日経BPから、《7割を工事につなげる「耐震診断」は、何が違うのか?》というキャッチコピーで、ある書物の案内がメールで配信されてきました。
いわく
 本日は日経ホームビルダーより、近日発売予定の
 「見てすぐわかるDVD講座  実践・耐震リフォーム」のご案内です。
 日経ホームビルダーでは、木造住宅の耐震診断400件の実績を持ち、
 うち約300件で耐震補強工事を受注した〇〇〇〇氏のノウハウに注目。
 7割を超える受注率を実現する「耐震診断」と「補強計画」は何が違うのかを
  「見てすぐわかる」ようにDVD講座としてまとめた自信作です。

その一と二は同じ方がかかわっていることは言うまでもありません。

その一。
ここにある「近年の地震で、『新しい建築物には被害は少ない』と報道されることがしばしばである・・・」は、要は、「学の成果」を「日常の事実」をもって示すことを意図した言辞にほかなりません。
そうであるならば、同じ論理の延長上、当然、最近どころか数百年も、「基準法の仕様に反する」建物が、いくつも健在であることをも、事実として認めなければならなくなる筈です。
ところが、それはしない。何故?

その二。
理由が断言できないようなら、簡単に言えば、理由が分らないのならば、少なくとも「基準に従っても、壊れることはある」と明言しなくてはなりません。

それにしても、「理由が断言できない、分らない」と言うのはおかしい。
なぜなら、そもそも、彼らの「拠って立つ理論」は、幾多の被災事例をみて、その「理由を断言する」ことで成り立ったのではないか?
どうしてそれらについては「理由」を「断言できた」のか?
きわめて条件のよい筈の実験で、起きる筈がないことが起きた、その理由が「断言できない」というならば、被災事例の「理由を断言する」のは理が通りません。

つまりこの「報告」は、自らの「ご都合主義」を、「自ら証した」ことに他ならないのです。

自分にとって「都合のよい結果」だけを実験に求めるのならば、それは scientific な実験ではないのです。それは、「儲けるため」の実験以外の何ものでもない。

その一、その二の事例は、つまるところ、これに関わる方がたの「ご都合主義」を、端無くも自ら実証していただいたようなもの、つまり「自白」。

その三。
耐震診断は、「儲けるため」の作業なのか?
以前、「耐震診断-耐震補強」というのは、霊感商法の臭いがする、と書きました。こういう書物が出されるということは、まさにその「証」。
こういう書を「日本『経済』新聞社」のグループ会社が出す、それで平気でいる。

先回の「ひとやすみ」で紹介した一文にもあるように(http://blog.goo.ne.jp/gooogami/e/aa6aaaa11b9cb734a578b36d56c292bf)、「経済」とはこのような「仕事で金を集めること」は意味していなかったはずです。「商売」「商い」とは、こんなものではなかった(だから霊感「商法」という語は、本当は誤用なのです)。気にする人もいるようで、そういう方がたはビジネスという語を使うようです。しかし、どう転んでも、同じ。
「経済」を売り物にするのならば、あらためて自ら使う「経済」の「定義・語義」を明らかにした上で使ってもらいたいものです。

なぜ、こうも頑なまでに「理」と「語」に拘るか。
きわめて単純です。欺瞞と作為の、これ以上の蔓延を防ぎたいからに過ぎません。

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見にくかったので、冒頭の図版を、個別に載せます。




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