[説明追加、5月8日、8.10AM]
昨日の断面図を見て、梁行断面が左右非対称なのはなぜ?という質問が身近なところからあったので・・・。
上の図面は、待庵の南面(にじり口側)と東面(露地の反対側)。
図は「日本建築史基礎資料集成 二十 茶室」より。
茶室には、このような例が結構ある(南禅寺金地院八窓席など)。
茶室をつくる人たちは、「茶室と言う建物」をつくるという意識よりも、茶をたしなむ空間をつくるために「物体:壁や屋根」を設ける、という意識が強いのだ、と考えると理解できるのではないかと思う。
待庵の場合、露地側、つまり書院の広縁から見える側の茶室の軒の高さは、あくまでも露地の空間:茶室へ誘う空間:を心地よくするための高さでなければならない、しかし、東側の明月庵と名付けられた書院から見たとき、その高さの軒では高すぎる、ゆえにそちら側は低くする・・、逆に、露地側の軒高を、明月庵側の軒高にそろえると、露地の空間としてふさわしくない・・、こういう視点でつくられているのである。
註 上の段落、「逆に~ふさわしくない・・」部分追加
これは、茶室本体の建物だけを考えないということ、ひいては、建物をつくるとは、空間をつくること、という考えが徹底している、と考えてよい。
「建築物」にこだわる設計者には、多分、ついてゆけない発想かもしれない。
しかし、私は、その方をとる。
もし待庵の設計者が、最初から書院を含めすべてを設計したならば、多分、茶室の屋根も左右対称にしたにちがいない。この場合、すでに妙喜庵があって、そこにいわば増築の形でつくることになったため、このような措置がとられたのではないだろうか。また、妙喜庵がもう少し高い建物であったなら、左右対称で納められたかも知れない。