地方の私立大学再生はなるのか

 文部科学省が、大都市圏にある大手私立大学の定員超過の抑制を検討していると云う。

 その理由は、大都市圏にある大手私立大学の入学者数が大幅な定員超過となっているのに対して、地方の私立大学のうちかなりの大学が定員割れとなっている現状の是正。もっと判りやすく云えば、定員割れが続いており、放置すれば遠からず経営が困難になる地方の私立大学の救済である。

 大手私立大学の定員超過の抑制は、定員超過に対するペナルティの強化で行う事が検討されている模様。つまり、現状では定員超過が20%(定員が100人の所に120人入学させる。定員充足率120%)以内であれば交付される補助金の基準を定員超過10%(同110%)に引き下げることにより、大都市圏の大規模校に流入する地方出身者を地元の私大に誘導しようと云う作戦のようだが、果たして上手くいくだろうか。

 大都市圏の大規模校にはそれなりの魅力があるから受験生が集まるのであり、その結果が大幅な入学定員超過となって現れる。大学の評価基準にはいろいろな視点があることを知りながらも乱暴な云い方をするならば、出来ることなら慶応・早稲田に入りたい。それが無理なら青山学院、明治、立教、中央。それが無理なら法政、成蹊、明治学院・・・。慶応・早稲田が無理なら、青学・明治が無理なら、成蹊・明学が無理なら・・・、・・・。それが無理なら地元の大学、とはならないのである。

 大都市圏の有名大学そのものにそれ程の魅力があるのかどうかは甚だ疑問ではあるが、地方の高校生にとって大都市そのものが魅力的に映ることは確かだろう。まっ、それだってホントに良いのかどうかは大いに疑問ではあるが、(高校生的視点に立てば)退屈な地方(田舎)よりも刺激の多い都会を目指す気持ちもわからないでも無いし、それは昨日今日に始まったことでは無い事も事実である。

 地方の私立大学には魅力がないのである。いや、魅力のない地方(田舎)にある大学だから魅力が無いように見えているだけなのかも知れない。いずれにせよ地元にある大学だからと、地元の高校を卒業して仕方なく進学する大学ではなく、全国から受験者が集まる程の目に見える魅力がなければ、大都市圏の大手大学の入学者数を抑制しても地方の大学の受験者・入学者は増えない。先にも書いたようにSクラス大学からAクラス大学へ、AクラスからBクラスへ、BクラスからCクラスへと受験者・入学者が流れ、中堅以下の大学の定員超過率が上昇するだけである。

 根本的な解決策は、地方に所在する大学の、誰の目にも見える魅力の発現とその増強であるが、云うは易く行うは難しであるなぁ。しかし、地方の大学がすべてダメかと云うとそうでもない。例えば秋田県の国際教養大学、例えば福島県にある会津大学。いずれも小規模公立大学であるが、日本全国から受験生・入学者を集めている。

 Wikipediaによれば、国際教養大学在学生を出身高校所在地別学生数でみると、地元の秋田県は僅かに14%、秋田県以外の東北地方・北海道が14%、関東地方が24%、中部地方が14%、関西地方が14%、中国地方・四国・およびそれ以西が12%、外国等が約8%と全国のみならず海外からも学生を集めている。

 これを稀有な成功例と捉えずに、各大学が「我が大学の魅力再発見&強化」の努力を重ねれば、国際教養大学の後に続く事ができる「かも」知れない。おそらくは文科省の施策による起死回生は無理。その末路は見えている。文科省としては、「行政として出来る限りのことはした。責任は果たした。経営破たんは自助努力が足りなかったからである」と云いたいのであろう。それが行政の常套手段なのである。

 学部・学科名を変えるなど小手先の改革ではなく、自校の建学の精神を見つめ直し、他とは違う魅力を抽出し、そこから発する、全てのステークホルダーにとって判り易い人材育成目標を掲げ、目標達成のための教育課程と制度を再構築すると云う基本に立ち返ったアクションが、結局は一番効果的なのかも知れないな。

注:主旨は変りませんが、部分的な修正・追記の可能性がありますことを予めご承知おきください。

 「恩田の森Now」 http://blog.goo.ne.jp/ondanomori 

 11月30日に撮影した写真を4点掲載いたしました。秋と冬との狭間を行き来する森の様子をどうぞご覧ください。

コメント ( 0 ) | Trackback (  )