唐松林の中に小屋を建て、晴れた日には畑を耕し雨の日にはセロを弾いて暮したい、そんな郷秋の気ままな独り言。
郷秋<Gauche>の独り言
決め手はイメージセンサーの大きさ
昨日、デジタルカメラのイメージセンサーの大きさについて書いた。小さなイメージセンサーで高画素(例えば1600万画素)なら、大きなサイズで同じ画素数のイメージセンサーよも高性能なのではないかと思われた読者がおられるかも知れないので、蛇足ながら書いておく。
クルマのエンジンの場合、少ない排気量で、大排気量のエンジンと同じ力(馬力とトルク)を出すことが出来れば、確かにそのエンジンは高性能であると云える。小排気量のエンジンをターボチャージャーやスーパーチャージャーで過給し、低燃費と高馬力・高トルクを両立させかつ有害排出物が少ないのが、近頃トレンドの高性能エンジンである。でも、デジタルカメラのイメージセンサーはちょっと事情が異なるのだ。理由はこう云う事である。同じ大きさの1200万画素と2400万画素のイメージセンサーを例に考えてみよう。
イメージセンサー全体が同じ大きさで画素が倍あると云う事は、一つの画素の大きさは半分になると云う事はご理解いただけるだろう。画素は、光を電気信号に変換する装置の最小単位だが、大きさが半分になると云う事は光を変換して作ることの出来る信号の量が半分になる。信号の量が少ないと処理をしたり記録する時に困るのでこの信号を大きくすることが必要になる。これを「増幅」と云う。
信号を一定の大きさに増幅する際、2400万画素の場合には1200万画素の2倍増幅することが必要になるが、この時に本来必要な信号だけではなく、雑音(ノイズ)も同時に2倍に増幅してしまうことになる。つまり、ノイズが大きくなるのだ。画素が2倍と云う事はイメージセンサーの配線の数も倍になる。同じ大きさのイメージセンサー上で数を倍にするためには配線を細くしたり、配線同士の間隔を狭める必要が生じる。
配線を細くすると減衰(配線を通っている間に信号が小さくなる)が多いくなり更に増幅度を上げる必要が生じ(同時にノイズも増える)、配線同士が接近することで、信号が互いに干渉(影響)しあい、時に混信(混線)することになる。必要な信号成分は紛れると、本来必要としている信号を正しく読み取ることが出来なくなる。つまり、本来必要な信号に対して不必要なノイズが相対的に大きくなってしまう。これをS/N(signal/noise)比が悪くなると云う。
同じ大きさのイメージセンサーの中により多くの画素を詰め込むと、結果として、本来必要な信号の量に対してノイズ量が多くなる、つまりS/N比が低く(悪く)なる、結果として画質が悪くなるのである。もっともいくらS/N比が高くても勿論画素数が極端に少ない(例えば初期のデジタルカメラのような30万画素)場合は別だが、1000万画素以上を前提に論じれば、より画素数が少ない方が高S/N比、つまり、ノイズの少ない郷秋<Gauche>画質の画像となるのである。
以上は、同じ性能の画素、同じ性能の増幅装置(アンプ)の場合に云えることであり、技術は日進月歩どころか秒針分歩で進む現在では、1000万画素の時よりも高S/Nを確保できる配線とアンプと設計することが出来るようになったことから、同じ大きさのイメージセンサーでも、画素数が増えても更に高画質なものを作ることが出来るようになったのである。ただしである、同じ性能の画素、同じ性能の配線、同じ性能のアンプを使ったとしたら、これはもう、画素数が少ない方が高画質であることは間違いのない事実なのである。
APS-Cサイズのイメージセンサーを搭載したDSLR(デジタル方式一眼レフ)と、フォーサーズ規格のイメージセンサーを搭載したミラーレスカメラ、例えばオリンパスE-P3の価格を比較した時に、APS-Cサイズのイメージセンサーを搭載したNikon(ニコン)D3100より、更に小さなイメージセンサーを搭載したE-P3の方が高価であるのは、小さいながらもS/N比の高い、つまり高画質なイメージセンサーを作るために、高度な技術、つまりは相当なコストを投入した結果であると思って、まず間違いはないはずである。
例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、父島にある欧米系住民の墓標。書かれた名前から想像すると、青野と云う日本人と結婚した、欧米系の旧姓「アグネス・何某」、青野アグネスさんの墓と云う事になるだろうか。昨日はエジソンと呼ばれていた、欧米系の少年をご覧いただいたが、小笠原諸島に最初に住み着いたのは日本人ではなく、ハワイから移住した欧米系の人たちである云われている。今日ご紹介した墓標からもわかる通り、父島では欧米系住民と日本人が混住し、おそらくはその血が自然に交じり合った、日本では珍しいい場所の一つと云う事が出来るだろう。