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『フェルマーの最終定理』サイモン・シン

2012-02-29 | books

「フェルマーの最終定理」サイモン・シン 新潮社 2000年
Fermat's Last Theorem, Simon Singh 1997

BBCの番組ホライズンで取り上げた「フェルマーの最終定理」 番組制作に関わったサイエンス・ライターが制作過程で知り得たこと、証明したアンドリュー・ワイズのインタビューなど、歴史&数学を一冊にまとめたもの。(Youtubeにその番組の一部を見つけたので、一番下に張り付けた)

超文系のワタシは、フェルマーの最終定理はもちろんのこと、微分も積分もリーマン予想もさっぱり分からない。そんなワタシなのに、この本は堪能できた。いや、正直こんなに面白いとは思わなかった。


nが2より大きい自然数であれば
Xn+Yn=Zn(XのN乗+Yのn乗=Zのn乗)
を満たす、自然数X、Y、Zは存在しない。

というのがフェルマーの最終定理。解が存在しないということを証明するのが非常に困難なんだそうだ。

n=2の場合は3x3+4x4=5x5(ピゴラスの定理)のように成り立つけれど、nが3以上の場合にはいかなる場合にも成立しないというもの。

式を理解することは難しくないけれど、証明の仕方なんてさっぱり分からない。350年間証明できなかったと言われても…

この本は、いきなりフェルマーを理解させるのではなく、ピュタゴラスから始めて、数学の基礎概念のいくつかを紹介し、数学と人間の歴史をひもといてくれる。途中の頁を開くとサッパリ分からないのに、順に読んでいくとよーく分かる凄い本なのだ。

証明をした論文をただ掲載したって分かるわけがない(100頁以上あるそうだ)巧妙にそれを回避して難しい数学を使わないでいかにその証明がすごいかを描写してくれる。学校の数学がちっとも面白くなかったという人にオススメである。読めば、フェルマーの最終定理を証明することがいかに重要なこと分かる。

東大の谷山・志村による「谷山=志村予想」によると、全ての楕円方程式はモジュラー形式と関連付けられるそうで、これがフェルマーの最終定理と大きく関わっているそうなのだが、この楕円方程式とかモジュラー形式についてはさっぱり理解できなかった。

その代わりに、今一つ理解できていなかったハイゼンベルクの不確定性原理がちょっと分かったり、ゲーデルの不完全性定理も前よりちょっと分かったような気がした。

まあ、こういう本をうんうんうなりながら読んでいる自分=カッコいいとか、自慢したいという気持ちを自分が持っている、ということを否定するわけじゃなく、オマエニハワカラナイダロ?的ないやらしい下世話な気持ちも多分あるんだろうと思う。ま、いいか。

同一著者による「暗号解読」と「宇宙生成」もひどく面白そうなので近日中には読みたいと思う。

では、また。



フェルマーの最終定理 (新潮文庫)暗号解読〈上〉 (新潮文庫)宇宙創成〈上〉 (新潮文庫)



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