頭の中は魑魅魍魎

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『料理人』ハリー・クレッシング

2012-03-20 | books

「料理人」ハリー・クレッシング 早川書房 1972年
The Cook, Harry Kressing 1965

中学生の頃、書店に並んでいるのを見て気になっていたのにずっと忘れていた。ハヤカワ文庫の100冊「強い物語。」に紹介されているのを見て、それから半年経ってから読み始めた。超スローモーな読書。

イングランドのコブという田舎町に、凄腕の料理人コンラッドがやって来る。町を支配するヒル家とヴェイル家があって、ヒル家の方のコックとなるために。素材の吟味から調理法、全てが完璧。それまで不味い料理を食わされていた人たち。痩せていた者は太り、太っていた者は痩せてゆく…

ああ。もうこれ以上言えない。文庫の背表紙の紹介文にも解説にも、何も詳しいことは書いてない。そう。意図して書いてないのだ。とにかく面白い。どんなジャンルの本かすら言いたくない。騙されたと思って読めば、大傑作と思うか、大駄作と思うかそのどちらかしかないと思う。

いや、これがつまらないと思う人とは友達にはなれないと思う…いやそれは言い過ぎか。

最後に、印象的だった箇所を引用して終わり。


「家事というものは、どんな商売よりも興味深いものです。多分、それは他のものよりはるかに個人とつながりがあるからじゃないですか?家族の誰の生活にも関連してますからね。商売は生活とは離れています。商売は生活を維持するためだけあるんです。それ自体が目的じゃないんです。商売は一つの手段です。家庭は究極の目的ですよ。そこに生活があるからです。もっと極端に言えば、それは…生活自体なんです」(183頁より引用)



料理人 (ハヤカワ文庫 NV 11)
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