漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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岸本佐知子著「なんらかの事情」ちょっとした事情がすごくおもしろくなる

2016-06-10 | 
ショートショートでしょうか。女性版星新一?いやいや岸本さんの発想はもっとすっ飛んでいる。

日常の事でも思いつきが微妙に意外だ。
その意外性が次々と連なって着地点は途方もないところにいく。
しかもその発想の連なりの途中にはちょっとブラックなこともあったりして、ドキドキする。
驚きでいっぱいです。

・スキーの記憶:
「くどいようだが、オリンピックは嫌いだ。」で始まる。
真っ向から「オリンピックは嫌いだ」と言う人はめったにいないと思う。
しかしオリンピックを愚痴るかと思えば意外なスキーの記憶に驚かされる。
オリンピックを控えて痛快。

・雨季:
雨が好きな彼女は、低気圧の図(ぷるぷるしてるらしいです)をすくって
腕にのっけると素敵なタトゥーになって、たまに耳を傾けると
ゴロゴロっと雷の音がかすかに聞こえたりするんだそうです。

・死ぬまでにしたい十のこと
「十と言いながら七までしか書けなかった。残りはまたいずれ書くかもしれないし、死が先に来るかもしれない。」
というフレーズで終わる。7つのしたい事が思いっきりくだらなすぎて恥ずかしくなるけど、
やれるものならやってみたいと充分思う。

こんな痛快な話が53話もある。
気持ちは軽やかになって、梅雨時の読書にぴったりだ。


岸本 佐知子1960年生まれ 神奈川県横浜市 翻訳家、エッセイスト、アンソロジスト
他の作品の題名は「ねにもつタイプ」「気になる部分」
これらの題名からも岸本さんの物語を想像できるのではないでしょうか。