森絵都「ショート・トリップ」覚書

一話きっかり３ページという短編がずらっと並び、そのすべてが旅物語。
そいういうと世界のあちこちのきらびやかな夢が詰まっているように思われるけど、あの森絵都さんだもの、一筋縄ではいかないのです、やっぱり。

このほとんどが、中学生新聞の連載だったそうで、
その期間中、一通も感想の手紙をもらえなかったという代物。
（そう正直に書いてしまう森さんが好きだなあ）

それは、一話読んでも二話読んでも、さらに読んでも、
納得のいく結末なんてひとつもない。

きっと人生という旅はめったにお気に入りの答えに出くわす事なんてなく、
それでも懲りずに、はちきれそうな期待を抱いて人は、
新しい場所へと旅を続けていくものらしい。

いつも単純明快な答を求める学業生活中の若者には、
この不可解な短編の連続に耐えられなかったのかもしれない。

読む人の世代とか生い立ちによってお気に入りが違うと思いますが、
ちなみに私はいまのところ、
「王様と亀と鈴木くん」「王様と鈴木くん」(旅立とうとしても旅立てない）
「共有」（言葉よりも・・・）
「旅人の椅子」（人生の休息、長さはいろいろ）
「パッカラキン五世の生涯」（報われない人生もある）
なんてところが好きかなあ。

追）さらにこの文庫本には、不可解な「いしいしんじ」の寄稿付き。
　この本にこの人。相性ばっちりです。

森絵都　1968年東京都生まれ　「DIVE！！」「永遠の出口」を書いた人です。