『紙の空から』 柴田元幸編 ☆☆☆☆
旅にまつわる短篇小説を集めたアンソロジー。柴田元幸のセレクトなので例によってシュールで奇妙な短篇が多く、楽しめた。あと、色んなイラストレーターの描いた挿絵が入っている。
気に入ったのは、まずジュディ・バドニッツ『道順』。この人の小説は初めてだったが、スピーディーな文体で描かれた遊戯的かつ詩的な短篇。ドナルド・バーセルミにちょっと似ている気がする。私 . . . 本文を読む
『オリジナル・サウンドトラック』 10cc ☆☆☆☆☆
初めて10ccを聴いたのは中学生の時で、音楽好きだった友人が「面白い音楽があるぞ」といってこのアルバムを貸してくれたのだった。ちなみにその時友人が貸してくれたもう一枚のアルバムはキング・クリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿』。驚くべきチョイスである。この組み合わせは壮絶といわなければならない。まったく、当時中学生だったあの友人の見識 . . . 本文を読む
『華麗なる一族(上・中・下)』 山崎豊子 ☆☆☆☆★
木村拓哉主演ドラマの原作だが、ドラマは未見。ドラマでは息子の鉄平が主役になっているらしいが、原作では親父の万俵大介が主人公。自分の企業的野心のために権謀術数を弄し、息子すら切り捨てていく冷酷な銀行頭取。『白い巨塔』と同じくピカレスク・ロマンと言っていいと思うが、万俵大介の方が財前より年配ですでに権力の座にある分、より老獪かつ強大である。 . . . 本文を読む
『フラガール』 李相日監督 ☆☆☆☆
レンタルビデオで鑑賞。路線としては『ウォーター・ボーイズ』とかああいうのと似ている。ちょっとキワモノ的というか、一種の気恥ずかしさを伴う芸に仲間達と精進することになり、周囲の反対にめげず、仲間うちでの葛藤、挫折を乗り越え、師弟の絆を育て、そしてある達成にいたる。私は観たことないが、『スイング・ガールズ』にも似ているらしい。
まあこの手のストーリー . . . 本文を読む
『わたしの名は紅』 オルハン・パムク ☆☆☆
ノーベル賞作家、オルハン・パムクの『わたしの名は紅』を読了。評判がいい本だし、『薔薇の名前』に似ていると聞いていたのでかなり期待して読んだが、個人的にはそれほど面白くなかった。残念だ。期待し過ぎたかな。
表面的には確かに『薔薇の名前』に似ている。中世が舞台、殺人が起き犯人探しが行われること、細密画、宗教に支配された人々。スルタンの宝物庫で細 . . . 本文を読む
『清作の妻』 増村保造監督 ☆☆☆☆☆
壮絶の一語。凄すぎ。観終わったあとどっと疲れた。(私にとっての)若尾文子シリーズ第三弾、『清作の妻』である。文句なくこれまでで一番の傑作、でもって一番コワイ映画だった。
途中からなんとなく『楢山節考』を思い出した。映画ではなく、小説の方の(映画はまだ観たことない)。村社会の怖さ、残酷さを描いているということもあるが、暗いおとぎ話のような無残で乾い . . . 本文を読む