はい、夏コミ原稿がヤバいんですがそれはそれとして行ってきましたサンサン劇場。
今日見てきたのはこれ!
室町ロックフェスとして界隈を騒がせているこの作品、まさに典型的な塚口案件。
マサラ上映が決定されるや、twitter上では「琵琶は? 琵琶は持っていっていいんですか?」とかいう完全におかしい質問が飛び交っていて実に塚口。塚口にはすでに「映画館で法螺貝」という前科がありますので、いつもの感じとも言えますし、いつもの感じとも言えます。うぁぐぐぐぉおあぇ!
そして恒例の待合室はこんな感じ。
待合室に琵琶(しかも手作り)が展示してある映画館なんて天の川銀河全部探してもここしかねえよ。実に塚口。
映画館が映画館なら客も客。今回はコスプレもOKとのことだったのでコスプレしてたり浴衣着てたりしてる人もいましたが、それだけに飽き足らず自作の琵琶を持ってきてる人が確認できただけで3人、応援用のうちわに書いてあるのが「犬王見届け隊」「足利氏打倒して♡」など、完全に塚口のノリに最適化しており笑えます。
これまでも無発声ではあるもののマサラ上映は行われてきましたが、やはりこうしたご時世なのでなかなか満席とは行きませんでしたが、今回は久々に上映日前に満席ということでめでたい。
上映時間が近づいてくると、劇場前に大量の人だかりができ始めて一種異様な雰囲気に包まれる塚口駅周辺。そしていよいよ開場。
今回のスクリーンはこんな感じ。
また、今回お隣の同志の方から紙吹雪を分けていただきました。こうした交流があるのも塚口の楽しみです。
上映開始時間が近づき、恒例の前説の前の前説が行われます。
挨拶とともに、今回のレギュレーションを改めて説明。
・今回は無発声上映
・鳴り物、手拍子、紙吹雪はOK
・サイリウムなどの光り物、クラッカーはNG、なぜなら600年前にはなかったから
作品の世界観を大切にする映画館、サンサン劇場。
そして、恒例の口上とともに戸村支配人入場! そして会場全員がスタンディング! ここほんとに映画館?
そう、もはやすでにマサラ上映は開始(はじ)まっているッ! というかここはもはや令和の日本ではありません。600年の時を遡り、今ここは室町時代となっているのです。大洗になったりマヒシュマティ王国になったりシタデルになったり忙しいなこの映画館。
さて、実はわたくし人形使いは犬王を見るのはこれが初めてだったりします。初見マサラはけっこうやってるんだよな。
まず本作の感想として言わせていただきたいのはこんなディストーションが効いた琵琶あるかーーーーい!!(全力ツッコミ)
本作のストーリーの骨子は、猿楽の一座に生まれた異形の子である犬王と、壇ノ浦の漁師の息子である盲目の子である友魚の二人の数奇な運命……といったものなんですが、そこで大きな要素となっているのが平曲。
盲目である友魚は琵琶法師となって、異形の姿を持つ犬王とともにこれまでになかった平家物語を披露して民衆の注目を集めていくんですが、その平家物語があまりにもこれまでになさすぎ。
どのくらいこれまでになさすぎかというと室町時代に「We Will Rock You」を持ち込んだり明らかにその場にないはずのベースとドラムの音がしたり火ィ吹いたりとやりたい放題。なんだよそのEDMみたいなBPMの平曲は。時代を先取りするにも限度というものがですね?
限度と言えば今回のマサラ上映、ライブシーンは(室町時代にライブ?)スタンディング可能という映画館にあるまじきレギュレーションが設定されており、中盤からのライブシーンではもう映画見てんのかライブに参加してんのかわからなくなってきました。
だいたい本作はほとんど音楽映画ってくらい音楽の比重が大きいので、思い返してみれば上映時間の3分の2はシートに座ってなかったと思います。ここほんとに映画館?(2回目)
そしてライブシーンでは、歓声こそ上げられないものの手拍子に太鼓に鈴に紙吹雪と、スクリーンと音響に負けないくらいの大騒ぎ!
さらには、ライブシーン中に劇場の天井に
そう、塚口のマサラ上映の楽しさの真髄は、「映画を見る」を「映画に参加する」にレベルアップさせること!
今日あの時あの場にいた観客のみなさんは、間違いなく600年前の室町時代に突如現れた友魚と犬王という謎の二人組の奏でる、あまりにも斬新な平曲に狂騒する平民でした。
今回が初見だったので、ストーリーの感想も書いておきましょう。
印象としては、「物語を語る物語」と言った感じでしょうか。
壇ノ浦の漁師のもとで生まれた友魚は、海中に沈んだ平家の物品を拾い集めていました。長じて琵琶法師となった友魚は、成仏できない平家の魂に誘われるまま、犬王とともに世間には広まっていない平家物語を語り始めます。作中では、友魚は一貫して「朽ちて消えかけているものを拾い集め、再び世に出すことで語り直す」という立場にあると言えるでしょう。そして彼は最終的に、自身もまた「朽ちて消えるもの」として、自身の語ってきた平家物語とともに歴史の闇の中に消えてしまうという……。
一方犬王は、定本以外の平曲を認めず、最後まで抗った友魚を処刑した足利義満のもとで舞い続けたものの、後世において彼の曲は一曲も残らず、その名のみが残るという結末に。
しかし、本作、この「犬王」という彼の名を冠する作品が、600年の時を経てこの令和の世に上映されました。
かつて室町の人々が友魚と犬王の歌い踊る狂騒の平家物語に熱狂したのと同じように夢中になれる場が今日このときに用意されたことで、一度は朽ちて消えたはずの彼らの物語は彼らがかつてそうしてきたようにまた語り直され蘇ったといえるでしょう。我々観客もまた、「犬王」という物語の一部として機能したように思います。
塚口のマサラ上映は、ただ単に大騒ぎできるだけでなく、こうして観客自身が、そして映画館という施設そのものが、上映作品という「物語」と同化してその一部になれることが非常に大きな魅力だと常々思います。バーフバリのときとか完全にシアター4は日本国インド領マヒシュマティ王国になるし観客の国籍は一時的にインドになるしな。お国がわからなくなっちゃうよお。
それにしたって、ただでさえコロナやらなにやらで鬱屈しがちなこのご時世に、これだけの馬鹿騒ぎができる場を設けてくれたことが何よりうれしいし楽しいです。
それでは改めまして、今回マサラ上映に参加された皆さん、紙吹雪を分けてくださったお隣の方、「犬王」制作スタッフの皆さん、そしてサンサン劇場のスタッフさん、お(疲れ様で)したッ!!(体育会系挨拶)