イベントづくめだった週末からさらに今日もいろんな用事を済ませてきたのでえらい。
整骨院に行ったりクリーニングに出していたコートを回収してきたり心療内科に行ったり梅田の紀伊國屋書店で「デイドリームアワー」を見つけたりとまあいろいろやって充実の1日でした。
そしてまた新しく見たい映画が公開されていたので見てきました。今回見てきたのはこれ!

本作は、ドイツのある平和な家庭を描いた作品。しかし、その平和な家庭のすぐとなりには、あの悪名高いアウシュビッツ収容所があった――。
いやーなんというか、本作は今まで見たことのないタイプの作品でした。感想を書くのが難しそう。
これまでにナチス・ドイツやユダヤ人迫害、アウシュビッツ収容所を題材とした作品はたくさんあったでしょう。しかし、本作はそれらの作品とはまったく趣を異にする作品でした。
本作では苛烈な虐待を受けるユダヤ人の姿やアウシュビッツ収容所の惨状の直接的な描写は一切ありません。画面に映し出されるのは、1945年のドイツで平和に過ごす家庭の姿だけ。
しかし……仲良く談笑する家族、青い空、元気に遊ぶ子どもたち。平和そのものといったその光景のすぐ向こう側には「荷」を燃やしている煙が立ち上る煙突がある。直接的な描写がないからと言って、「それら」が存在しないわけではありません。むしろ、平和な日常の片隅に見切れるように写っているからこそ、「それら」の存在はこの平和な日常の中に厳然と存在していることが浮き彫りになっている。
このコントラストが、本作に異様な雰囲気を与えています。
本作は正直なところストーリー的な面白さはほぼありません。どんでん返しがあるわけでもなく、一大スペクタクルがあるわけでもない。実は中盤でちょっと寝てしまった……。
逆に言うと本作は、前述のような平和な日常とアウシュビッツ収容所が「日常の風景」として共存している異様な光景が淡々と続くことで、だんだんと自分の中の何かが麻痺してくるように感じられました。最大規模のユダヤ人収容所であるアウシュビッツ収容所が、そこで行われている虐殺の存在が、なんということもない当たり前の風景に感じられてくるというか……。
そんな観客に一気に冷水を浴びせるあのラストよ……。本作は壁1枚隔てた「ドイツ人の平和な家庭」と「日々ユダヤ人が虐殺されているアウシュビッツ収容所」というふたつの世界の間に横たわる「無関心」という壁を描いた作品なんですが、あのラストで今度は「過去」と「現在」、ひいては「スクリーンの中」と「スクリーンの外」というふたつの世界の隔たりを観客に突きつけるという……。
あのいきなり現在に時間軸が飛んで記念館となったアウシュビッツ収容所をスタッフが掃除するあのラストシーン、まるで「この映画を見ている側のお前も無関心側の人間なんだぞ」と言わんばかりで、かなりぞっとしました。
トレーラーでは「どんなホラー映画よりも恐ろしい」と謳われていましたが、この種類の恐怖を映画という媒体で描いた作品は本作が初めてなんじゃないでしょうか。
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