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主に映画、ゲーム、同人誌の感想などをコンクリートミキサーにかけてブチまけた、ここはいいトシしたおっさんのブログ。

塚口サンサン劇場「バジュランギおじさんと、小さな迷子」「リンダはチキンが食べたい」見てきました!

2024-05-19 23:47:58 | 映画感想
 今日も塚口。
 明日も塚口。
 もはや1週間のスケジュールを塚口の上映スケジュールに合わせて立てざるを得ないくらい充実してる上に今度は「まちの映画館 踊るマサラシネマ」発売記念イベントもあるのでもはや自分が何人いても足りません。
 というわけで、今日見てきたのはこれ!
 
 
 この作品をまだ見てなかったなんで口が裂けても言えない。
 twitter(頑なにXとは呼ばない)によれば、「途中でスポーツドリンクでの水分補給を要するほど泣ける」とのことだったので、上映終了後にはガスコンロの裏に落っこちて4年くらい放置されてペナッペナになってるバナナの皮みたいになってることを覚悟して見に行くことに。
 その前に、地下待合室のポスターを撮影。
 
 
 映 画 化 決 定 。したらいいなあ。ラストシーンではジャイアント戸村支配人とメカ岩浪音響監督が大バトルですよ。
 さて「バジュランギおじさん」の感想に行きましょう。
 
 パキスタンの山村に暮らす6歳の少女、シャーヒダー。彼女は生まれたときから声が出せない障害を持っていました。そんなシャーヒダーを心配した母親は、国境を超えてはるばるインドまで祈願に向かいます。
 その帰り、夜に列車が停まったときについつい外に出てしまっていたシャーヒダーは、動き出した列車に乗り遅れインドに取り残されることに。たまたま通りかかった貨物列車に乗り込んだシャーヒダーはハリヤーナー州クルクシェートラにたどり着きます。
 異国の地で身よりもなければ行くあてもないシャーヒダー。そんな彼女の前に現れたのが、ハヌマーンを信仰する青年パワン、通称バジュランギでした。こうして、底抜けにお人好しで正直なのでウソがつけないバジュランギと言葉を話せないシャーヒダーのふたりの珍道中が始まります。
 で、本作の感想なんですがすまんがその石を……しまってくれんか。わしには強すぎる……と思わずポムじいになってしまいました。
 わたくし人形使いは日常的にイヤ~な気分になれる映画ばっかり見てて人間や社会のゲドゲドでゲロゲロな側面ばっかり見てるんですが、こんな人間の善性の輝きを直で浴び続けたら跡形もなく蒸発してまうわ……。
 わかってくれる人はいると思いますが、「人類愛!」だとか「家族愛!」っていうお題目を掲げた作品には、しばしばある種の嫌悪感というか欺瞞を感じることがあるんですよね。「そんなのただの綺麗事じゃないか」というような。もっと言うと、その綺麗事がきれいであればあるほど逆説的にその後ろに隠れているものやその薄っぺらさが透けて見えてしまう。
 しかるに本作はどうなのかと言うと、その善性があまりにも素朴で真摯なんですよ……その裏に隠しているものなんかなにもない、ただただ朴訥で純粋な善性。
 主人公であるバジュランギは前述の通り底抜けのお人好しで正直者。どのくらい正直者かと言うと、インドの往来で堂々とシャーヒダーがパキスタン人であることをはっきり言ってしまうばかりか、インドとパキスタンの国境警備隊にビザやパスポート無しで密入国してきたことを全部正直に話してしまうくらい正直者。
 このへんのあまりにも行き過ぎた正直さが本作の笑いどころであって、そのたびにシャーヒダーが「あちゃー」みたいな仕草をするのがあまりにもか”わ”い”い”い”い”い”い”い”い”。(うめき声)
 そしてこのバジュランギの善性に理由がないというのが本当に純粋なんだよな。打算があるわけでも特別な信仰を持っているわけでもない、ただ単にお人好しなだけ。そんな彼が、ただただ自分の信仰と善意だけでインドとパキスタンの国境を超えてシャーヒダーを故郷に送り届けようとする姿は、前述のようなひねくれた視点など入り込む余地のないものでした。あまりにも純粋すぎる……。
 バジュランギの姿はある意味ではひどく滑稽で、愚か者にすら見えることがあります。ちょっと嘘をつけばいいことでもバカ正直を貫き、いたるところで信仰にすがり己の信じる神であるハヌマーンに祈りを捧げる。しかしその「信仰」が、揺るぎない「現実」であるはずのインドとパキスタンの国境を文字通り乗り越える。そういう意味では本作は「信仰対現実」とも言えるのではないでしょうか。
 そもそも映画をはじめとするフィクション、虚構には、しばしば「どうにもならない現実」に対するカウンターとしての側面があります。本作は、現実として存在するインドとパキスタンの国境問題をフィクションの力でもって解決しようとする意図、願いが込められていると言えるでしょう。パンフレットの言葉を借りればインドは「虚構の世界が現実の世界を支配することが事実として起こる国」。本作は決して絵空事などではなく、本当に現実を変えられるだけの力を持った作品だと思います。
 反面、本作は逆に「現実の脆弱さ」を描いている点もあります。本作では途中で第二のおじさんことパキスタン人のTVリポーターであるナワーブがふたりに協力し、その映像を上司に報告してシャーヒダーの両親を探そうとしますが断られてしまいます。その理由が「話題性がないから」。「現実」というものはあるときはどうしようもないくらい強固なものなのに、またあるときは「現実なんてこんなもんだ」と言われるような脆いものでもあるんですよね。「個人の善意でこれだけのことができる!」と同時に「個人の善意でできることなんて所詮この程度」というのを同時に描いてるんですよねこの作品。だからこそ善性が安易に万能化せず、薄っぺらくもならない。
 そしてこのシーンのナワーブの「『憎しみ』にはみんなすぐに飛びつくのに、『愛』には……」というこの言葉のあまりにもあまりな現実味よ……。まさにそのとおりだよ……。責任取らなくていいからなネット上の憎しみには……。
 しかし、しかしですよ! ラストシーン、この現実の強固さと現実の脆さをも乗り越えて、たったひとりのただのお人好しの青年の善意と信仰が、ついにインド・パキスタン両国の人々を動かすラストシーンの感動よ……。オタクならみんな大好き元気玉展開ですよ。うしおととらのラストバトルですよ。
 これまで世話になってきた人々、ちょっとしたきっかけで二人に関わってきた人々、二人のことなんて知らなかったはずの人々ががナワーブの放送した映像を見て国境に集まってくるあのシーンからの、シャヒーダーがはじめて言葉を発するあのシーン、これほど「大団円」という言葉がふさわしいラストがあるでしょうか。もうこの辺、当然のことですが劇場のそこかしこからすすり泣きの声が聞こえてきてました……。
 ここで良かったのが、ふたりに協力した人たちだけでなく序盤でシャーヒダーを売春宿に売り飛ばそうとした旅行代理店の男や密入国を手引きしていた男たちも同じようにみんなバジュランギとシャーヒダーの映像を見ているところ。ちょっと笑えるシーンでもあり感動するシーンでもあるんですよね。
 いやー……なんかもうここまでまっすぐに人間の善性を肯定してくれる作品、久々に見ました。世の中まだまだ捨てたもんじゃねーな(滂沱)といった感じです。善き人間でいよう。
 
 その後、少し時間をおいて今度はこの作品。
 
 
 これまたサンサン劇場での予告がきっかけで知った作品。
 本作は絵の具で塗った絵がそのまま動いているような独特な絵柄のフランス作のアニメーション作品。
 主人公リンダとその母ポレットは二人暮らしの家庭。あるときリンダが結婚指輪をなくしてしまったことでポレットは激怒。しかしそれは勘違いでした。無事に指輪が見つかったことで、ポレットはリンダにお詫びに何でもしてあげると約束します。
 そこでリンダは、かすかに残るパパの記憶の中にあるパプリカ・チキンが食べたいと言います、しかし翌日街に出たところ、肉屋もスーパーもストライキで閉店! 困り果てるポレットですが、リンダがパパの思い出を取り戻したがっていることを知ったポレットは、何としてでもチキンを手に入れるために奮闘。しかしその奮闘が街を大騒ぎに巻き込んでいき……。
 カラフルかつ簡素、まるで絵本のようなグラフィックで展開するこの作品は、チキンを巡るドタバタ劇であると同時に、8歳を迎えたばかりの幼い少女であるリンダが「父の死」を理解して受け入れるための、いわゆる「喪の作業」だったんじゃないですかね。
 まずチキンが手に入らなかったポレットは農場の生きた鶏を手に入れます。そのため当然、パプリカチキンを作るためには鶏を殺さなくてはいけません。賑やかなドタバタ劇の中に序盤から「死」のニュアンスが含まれてるんですよね。
 そして逃げ回る鶏を追いかける追走劇は、どちらかと言うとリンダと言うよりはポレットの喪の作業だったように思います。一連の騒ぎによって日常の忙しさや付き合い、ルーチンワークから強制的に引き離されることでまだ消化できていなかった夫を失ったという経験と改めて向き合ったり、新しい人々と交流を持ったりする機会を得たんじゃないですかね。
 最終的に出来上がったパプリカチキンを出会った人々や子どもたちに振る舞うラストシーンは、文字通り「家族の死」を腹の中に収めたという終わり方だったと思います。
 それにしても、本作では「家族の死」というネガティブな出来事をユーモラスに描いていたのが印象的。そのへんも含めて絵本っぽい作品でした。
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