木曜日といえば滑り込みの日。
というわけで、かねてより公言していた通り、本日実質ゆるキャン「ミッドサマー」とママの異常な愛情「ボーはおそれている」の2連続視聴による人体実験を敢行してきました! やはり何事も自分の身で体験せねば。自分の身はいちばん身近な実験材料です。
両方ともすでに単独でのレビューは済ませているので、今回は両方を総括した方向で感想を書いてみましょうか。
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思うにこの2作品、こうして連続で見るとどちらもいくつかの共通点がありますね。
まず、どちらも「個人vs集団(社会or環境)」という構図なところ。
「ミッドサマー」では家族を失って悲しみに暮れるダニーという個人が、ホルガ村という集団にその悲しみごと飲み込まれていく物語。「ボーはおそれている」は抑圧的な母に育てられたボーという個人が、彼自身の内に構成された歪んだ社会認知の中に埋没していく物語と言えるでしょう。それに、ラストの裁判所のシーンはあからさまにボー個人と集団=社会を味方につけた母親との対立構図でした。
そしてその対立構図はどちらも最初から負け戦である点も共通しています。主人公であるダニーにもボーにも勝ち目はなく、ダニーはメイクイーンとしてホルガ村に祭り上げられ、ボーは最終的に出来レースな裁判の末に水中に没するという。
「ミッドサマー」はことさらにこの点が明白というかあからさまで、そもそも最初の最初にスクリーンに映し出されるあの絵で作品のストーリーが最初から最後までぜーんぶネタバレしてるという。そういう意味では「ミッドサマー」の物語は起こるべきことが起こるべくして起こった物語であり、主人公らが何をしようとその結末は最初から決まっていて誰もその結末からは逃れられないという構図だったと思います。
「誰も逃れられない」という点は「ボーはおそれている」も同じ。こちらはボーはそもそも冒頭から最後まで己の歪んだ認知世界から逃れられずひたすらその中をさまよい続けていると言えるでしょう。本作はボーの旅路を描いてはいるものの、実質的にボーはどこへも行けてはいないという……。
また、両者ともにその作品の根底には間違いなく「愛」があったと思います。ポジティブな意味かどうかはさておき。
「ミッドサマー」では愛する家族を失ったダニーは恋人であるクリスチャンにも重荷に感じられていて助けてもらえない。そうした喪失感をホルガ村という共同体が持つ「愛」によって補完されていきます。対して「ボーはおそれている」では、一連の事件すべてがボーの母であるモナが息子であるボーに対して「その愛を試す」という執着から起こしたものであることが明らかになります。両者ともに主人公の行動には「愛情の欠損」が大きなファクターとして作用しているわけですね。
このように両者には大きな共通点がありますが、同時に明確な相違点もあります。それは生と死。
家族の死で物語の始まりを迎える「ミッドサマー」に対し、出産時の記憶から始まる「ボーはおそれている」。そして「ミッドサマー」では9人の男女が生贄として業火の中に消えていくシーンでラストを迎え、「ボーはおそれている」では作中でたびたび示されていた「子宮」「胎内」のメタファーとしての水中に没するラストシーンは明らかに胎内回帰。両作では正反対の要素があるにも関わらずダニーとボーの行き着いた先は同じく「周辺環境に飲み込まれる個の消滅」なんですよね。これは「ミッドサマー」で言及されていた「輪」の話にも通じる部分があると感じます。
うーん、この感想を書いていて思ったんですが、「ミッドサマー」は「線」で「ボーはおそれている」は「輪」なのかも。
「ミッドサマー」ではダニーの運命はホルガ村出身者であるペレが彼女に目をつけていた段階からすでに決まっていて、ダニーはその決められたルートに従って抵抗もできずに「一直線に」定められた運命に従って落っこちていく。対して「ボーはおそれている」では、出産の瞬間から始まったボーの物語は、「巡り巡って」スタート地点である胎内に戻ってしまうという対照関係にある気がします。まあどっちにしろオゲェェという点では共通してるんですが……。
……とまあアリ・アスター監督作品2連続視聴人体実験を行ったんですが、「ボーはおそれている」が終わって席を立ったときに長時間座りっぱなしだったせいかはたまた精神に異常をきたしたのかえらくふらついてしまいました。映画を見たあとで足元がおぼつかなくなるという経験をしたのは「RRR」以来だったりする。
いやー実験を終えての感想なんですが正直キッツイわー……。どっちもメンタルに装甲貫通ダメージが来るタイプの作品なのでなかなか辛い。そして「ミッドサマー」で打ちのめされたあとに「ボーはおそれている」の悪夢3時間フルコースはなかりキツくてなんかもう一週回って楽しくなってきました。(グルグル目)次はヘレディタリーでお父さんファイヤーだ!(ヤケクソ)
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