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主に映画、ゲーム、同人誌の感想などをコンクリートミキサーにかけてブチまけた、ここはいいトシしたおっさんのブログ。

塚口サンサン劇場「ソング・オブ・ザ・シー海のうた」「海獣の子供」見てきました!

2024-07-04 23:50:56 | 映画感想
 毎週木曜は滑り込みの日。
 というわけで今日は久々にアニメ作品を2本連続で見てきました。
 まず1本目はこれ!
 
 
 「ウルフウォーカー」のトム・ムーア監督による劇場長編アニメーション映画の第2作目。以前にも塚口で上映されてましたが、そのときはウルフウォーカーだけしか見てなかったので今回見ることに。
 本作は、地上では人間の姿、海ではアザラシの姿となる妖精セルキーの伝説を元にしたファンタジー作品。
 灯台のある離児島で暮らしている兄ベンと妹シアーシャ、そして父のコナーと大型犬のクー。母ブロナーはシアーシャの誕生と入れ替わるようにして姿を消しており、ベンはシアーシャに冷たく当たりがち。
 いっぽうシアーシャはなぜか生まれたときから声を発することができず、家族仲はぎくしゃくしていました。そんな折り、シアーシャはブロナーからもらった形見の巻き貝の笛の音に導かれるようにして自宅に隠してあった宝箱を発見。その中にしまってあった白いコートを着たシアーシャは、白いアザラシに姿を変えます。母ブロナーはセルキーであり、シアーシャはその血を濃く受け継いでいたのです。
 本作の魅力はたくさんありますが、まず何と言ってもビジュアルが優しい。まるで絵本のようなデザインで綴られる本作は、セルキー伝説をもとにしたストーリーと非常に親和性が高く幻想的な雰囲気を高めています。ウルフウォーカーでもそうでしたが、場面ごとの細やかな筆致の使い分けはどちらかというとマンガの技法に近いものを感じました。
 そして耳に残るBGMとヴォーカルソング。テーマ曲「Song of the Sea」のいかにも古くから歌い継がれてきたという雰囲気の曲調は、観客を一気に作中世界に引き込んでくれます。
 ストーリーは日本ではおなじみ?の異種婚姻譚が核となっていますが、本作ではベンとシアーシャの冒険に焦点が当てられています。その冒険の中で最初はシアーシャに冷たくしていたベンがだんだん「おにいちゃん」していく姿が微笑ましくて眩しくて穢れた大人としては目ェブッ潰れそうになりました。眩しすぎる……。あとお年寄りキャラが軒並みいいキャラしてたのがよかったですね。
 
 続けて2本めはこれ!
 
 
 公開当時は見てなかったんですが、こないだのボヘミアンのときに会ったフォロワーさんが激推してたので見に行くことに。
 そして例によって例のごとく、本作に関しての前情報はほぼゼロ。知ってることと言えば予告、ポスター、そして漫画が原作だということだけ。内容に関しては漠然と青春ファンタジー系の作品だろうなーと想像していました。
 主人公・琉花は活発だけど不器用で人間関係がうまくいかない中学生の女の子。せっかくの夏休みもトラブルで始まってしまいます。そんな夏の日、琉花はジュゴンに育てられたという不思議な男の子・海、そして海の兄である少年・空と出会います。三人の出会いがきっかけであるかのように、世界中の海ではさまざまな異変が起こるようになり……。
 本作は序盤こそ夏の日の思い出的な青春ファンタジー作品の雰囲気でしたが、話が進んでいくごとにだんだんストーリーの規模というか焦点が大きくなり……ってこれ完全にSFでワイドスクリーン・バロックじゃねーか!!
 まあ「海」というテーマ的にそっち方向に舵が切られるのは不思議ではありませんが、あの導入からこの方向とこの深度に話が進むとはまったくの予想外でした。
 琉花は海・空のふたりと関わりを深めていくとともに、この地球という惑星の成り立ちや移り変わり、海と空に秘められた記憶を追体験することになります。これらの壮大なイメージの本流は徹底して抽象的で幻惑的ですらありました。特に印象的だったのが、雨の中で琉花が自転車を走らせていると突如周囲に魚のイメージの奔流が巻き起こるというあのシーン。美しいシーンであるのと同時に、琉花がヒトならざるなにものかの世界に取り込まれつつある描写のようで恐ろしくもありました。
 というか本作のビジュアル、基本的に「美しく恐ろしい」そして「寓話的で示唆に満ちている」なんですよね。海はともかく空は明らかにこの世のものではない存在としてのビジュアルを持っていますし、「隕石」を口移しで琉花に飲み込ませるシーンは先に見た「ソング・オブ・ザ・シー海のうた」でもあった異種婚姻譚、ひいては妊娠・受精のメタファーですらある。
 後半にかけて怒涛の展開を見せる本作のあまりにもダイナミズムにあふれた海の描写は、ある種の畏怖すら感じました。そう、海は我々にとってもっとも近い宇宙なんだよな……。渦巻きは銀河の基本的構造なんだよな……。
 これだけ抽象的な方向に舵を切っておいて、その終着点は従来の他の夏休みを舞台にした作品と同じように「夏の終わりにちょっとだけ成長した少女」なのがまた異質。
 あれだけのことがあったのに世界は当たり前に夏の終わりを迎えているなか、琉花は確実に変わっている。もしかしたらあれだけのスペクタクルはすべて琉花のパーソナリティの中で起こったことなのかも知れません。さかしまに言うなら、琉花が「夏の終わりにちょっとだけ成長する」ということはそれだけで宇宙開闢にも匹敵するスペクタクルだということなのかも。
 果たして物語は波から凪へ移り変わって終わります。Cパートでは琉花には妹が生まれることで、ルカもまた受け継いだ側から血耐えていく側になったのではないかと思いました。
 今日は2作続けて海をテーマにした作品を見たせいか、海に行きたくなってきましたね。夏はコミケ以外に夏らしいことをろくにしてないので海か水族館に行くくらいはするかな……。
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