崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

映画「オレの心は負けてない」

2011年05月22日 05時19分58秒 | エッセイ
 
映画「オレの心は負けてない」を鑑賞した。在日朝鮮人宋神道さんの慰安婦への賠償裁判過程を撮ったドキュメンタリーである。「在日の慰安婦裁判を支える会」が制作、安海龍の監督である。映画鑑賞後鍬野さんから感想を聞かれて答えられなかった。この映画をどのように見るべきか見てから考えることになった。三つの点から注目される。一つは従軍慰安婦として宋神道氏の証言、二点目は「語り部」、三点目は戦争や慰安婦をめぐる社会運動である。証言はどうであろう。自分で親が決めた人との結婚が嫌で家を出て一人で生きていけるという話にだまされて行ったという証言以外には映画「ナヌムの家」の場所を使っていて証言として価値はどうかと思われる。映画の中に紹介された新聞記事に「語り部」というのは一番的確であるような感じがした。それも一人芝居や遠野市の観光客の前で語る語り部のような整理された、あるいは物語り化されたものではない。ただ日常の方言、無作為に出る卑語、朝鮮語交じりのしゃべり方で、冗談、笑い、怒りの面白さがある。しかしその女性、「慰安婦」をもって反戦と平和という巨大なテーマにした在日の慰安婦裁判を支える会」の裁判への過程が鮮明になっている。
 中国での7年の「慰安婦」体験が彼女の気質になって残っているのか、パーソナリティーを劇化した映画である。もし私が裁判するならこれらの証言をどのように客観的に資料化して扱うか、非常に戸惑うかと思う。裁判の結果より社会運動の効果を目指すようなことは民権運動では多くある。韓国では慰安婦が反日英雄のように報道されて、今も尊敬されている。そして慰安婦であったことの報告会を行う。私は映画に登場する韓国の慰安婦さんや韓国挺身隊対策委員会の会長などとも数回も会ったことがある。戦争犯は戦争と同時に終わるが戦争中の人権犯罪は永遠に問題にすべきである。戦争中の性暴行は社会運動の対象より、人間性の回復として思考すべき、根本的な問題であろう。

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2 コメント

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Unknown (黒羊)
2011-05-23 04:07:26
なんでこうも慰安婦の方の人権がどうの、と言われる方って、基本条約結ばれる前の朝鮮戦争時に韓国が、旧日本軍の慰安所のシステムを真似た慰安所を開設し、やっぱり騙されて連れて来られ、暴行された方々がいると言う話は丸っと無視してしまうんですかね?

言いましたよね。朝鮮半島から燃料使って各地に慰安婦運ぶより、現地調達した方が遥かにコストパフォーマンスに優れると。何故悪行三昧な旧日本軍が、それをしなかったのかを考えろと。
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早速ありがとうございます (鍬野保雄)
2011-05-22 09:46:47
映画をご覧いただきありがとうございました。
早速ご感想をUPいただき感謝です。
なかなか扱い辛いテーマですが、被害者のこと、そして戦後日本のあり方、人間として問われています。
一般的に日本では考えないようにして来たことをこの映画は取り上げて、被害者の過酷な体験だけど、宋神道さんのパーソナリティに私たちが救われ、宋さんも人間不信の鎧を次第に外していってくれたと裁判をサポートをしていった人が語って言たのも印象に残りました。
アンケートが沢山寄せられましたが、どれも宋さんに励まされた。上映ありがとう、という感謝が述べられていました。
この問題は戦争が引き起こした悲劇であり、二度と再び戦争をしないためにもこの歴史事実を日本でしっかり教育すべきだと思います。
ドイツの戦後補償に日本はもっと学ぶべきと思います。
「原発は安全」と信じ込まされて来て現在のように収束の見通しもつかない放射能ダダモレが続いています。
「日韓問題は解決済み」これも信じ込まされてきたものだと思っています。
>戦争犯は戦争と同時に終わるが戦争中の人権犯罪は永遠に問題にすべきである。戦争中の性暴行は社会運動の対象より、人間性の回復として思考すべき、根本的な問題であろう。

まったく同感です。
ありがとうございました。
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