崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

刑務所と「教導所」

2011年06月28日 04時56分38秒 | エッセイ
 中国の私の教え子から私のホームページが開けないからメールで書くというメールが届いた。いつか中国の人権に触れたことがあり、それが原因かもしれない。中国へ行った時そこで開こうとしたがやはり開かなかったことを確認した。今ウォルチャーMichael Walzer著の『戦争を論ずる』の書評を書いている。正しい戦争は人権や人道上のためには他国にも介入戦争が可能だといっている。人権問題は国家の内政問題を超えて普遍的な問題であるという。国際刑事裁判所はリビアの最高指導者カダフィ氏らに対し、「人道に対する罪」の容疑で逮捕状を出した。逮捕して欲しい。
 中国で「国家政権転覆扇動罪」を言い渡され、3年半服役していた胡氏が釈放されて再び自宅軟禁状態に置かれる模様だという。現在37歳の胡氏は、2007年に逮捕され、懲役3年半の有罪判決を受けた。このような人権運動者の収監者は130人ほどいるという。彼らは時代が変われば英雄になるかもしれない。刑務所を「教導所」に改名したところもあって実にそこからすばらしい思想家などが生み出される。
 私と陸軍士官学校の教官であった辛栄福氏(写真)は1968年統一革命党事件で無期懲役を受けた。彼が20年と20日間という長い受刑生活の中で書いた『監獄からの思索』が有名である。彼は刑務所で辛い日々を暮らしながら高次元の思索をしていた時に私は厳しく盗聴装置がおかれている教壇にたって愛国心を教えていた。彼は読書家であり、スピーチがうまかった。彼は女子学生などのグループを指導していた。私も一回担当したことがあり、親しく教官生活を暮らしたが彼が逮捕されたニュースを聞いてとても驚いた。富川刑務所に面会に行ったができずそれっきり、私は日本に留学し消息なしの状態で今日まで来た。彼は私を完全に忘れたかもしれない。私が彼を思い出したのはその著書である。鋭い観察と思索の深さには感動した。その文例…
  夏の服役は自分のすぐそばの人を憎悪するようにする。ぎゅう詰めで寝いるので睡眠を十分にとれない。狭い寝床はそばの人を単に37度の熱の塊りとしてだけ感じさせます。これはそばの人の体温で寒さを緩和する冬季の原始的な友情とは克明な対照をなす刑罰中の刑罰です。自らの最も近くにいる人を嫌うという事実、自らの最も近くにいる人から憎しみ受けるという事実は非常に不幸なことです。

 

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1 コメント

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人権 (本山大智)
2011-06-28 11:07:42
 「民主主義」という言葉は、私たちは日ごろから耳にする言葉ですが、海外に視点を向けるとそうでないところもあります。
 世界には、さまざまな考え方があり、私はその考えに異を唱えることはできないと思いますが、「国民」が基本という考え方は世界共通でもいいのではないでしょうか。
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