崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

「阿Q正伝」

2009年06月28日 05時00分20秒 | エッセイ
 魯迅の「阿Q正伝」を再読した。私は若いころ古い因習を改革して近代化の精神を魯迅に求めて読んだことがあるが十分読破したとは思えない。再読してみると改めて新鮮味が湧いてきた。主人公の阿Qは小さい村では変人とも思われる人であり、女にプロポーズしたことのハプニングで仕事を失い、彼に対する世論が悪くなって、結局死刑にされる話である。短編小説としての短文で「正伝」を書いているので内容がかなり縮約されていて、調べたりすることや想像すべきことの多い小説である。
 社会主義中国では長い間「世論」を重要視して「人民裁判」をしてきた。それで文化革命の時は多くの人が犠牲になった。つまり多くの人が噂や世論によって、特に変人のような人が苦労し、殺された。昔から「人心は天心」といわれて、支配者は民心に耳を傾けようとした。今の言葉で言うと世論調査である。大学などでは学生に授業評価をさせてそれで優秀賞を出すところもある。しかし噂が「民心が天心」ではないと魯迅はそれで人を殺すようなことを問題にしている。「民心が天心」という言葉の真の意味は朝夕変わる心と誤解してはいけない。
 今世論が「麻生下し」をしている。総理という制度・正座であるからその職に延々として行くところまで「俺がやる」というのも問題であるが、世間の噂のような世論で政治を左右しても困る。「阿Q正伝」を再読した意味がここにある。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿