崔吉城・菅原幸子夫妻のエッセイ集『日韓に生きる』が、クォリティ出版から発行された。「夫婦が書くエッセイ」としてブログで発表してきたものをまとめたもので、昨年の『下関に生きる』に次ぐ第二集である。
崔氏はソウル大出身の文化人類学の研究者で、現在下関の東亜大学教授。夫人の菅原氏が看護士を勤めながら毎日、崔氏の文章を校正しつつ共通の価値観をもって公表してきた。今回は、韓国で生まれ育ち、日本で長年研究・教育活動をしてきた崔氏が日日の生活の幅広い分野――たとえば花や季節、住まいや食べ物、対人関係や人生観、教育や研究生活など――で感じたことを自由に綴ったものをそれぞれに項目立てて構成している。
偽りのない飾り気のない文章であるが、そこには韓国と日本の風土、風俗・習慣の相違、あるいは感受性の機微について、文化人類学者らしい洞察とともに、なにものにもとらわれぬ問題提起も含まれている。このエッセイ集でもふれられているが、著者のこうしたリベラルな立場を形成するうえで、少年期に衝撃を受けた朝鮮戦争での体験がその原点になっているといえるだろう。
「結局、政治家達が戦争を起こした。政治家への不信は私の戦争体験から来ている」という著者は、文学・芸術をこよなく愛し、民主主義を希求する。そのヒューマニズムが、社会的な構造に迫る骨太さをもって広範な大衆の願いと響き合うものへと発展させられることが期待される。
(クォリティ出版、B6版・三〇八ページ、一〇〇〇円+税)
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