崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

『朝鮮の巫覡』(1932年)の翻訳出版

2014年09月14日 06時39分57秒 | 旅行
 朝鮮総督府統治資料のシリーズの第1冊が拙訳によって韓国で出版された。本はまだ届いていない。私の序文を紹介する。

 <発刊にあたって>
 村山智順の『朝鮮の巫覡』(1932年)の翻訳出版は遅すぎる感がなくはない。日帝植民地時代の統治資料に関して解放後の韓国ではタブ視される傾向があった。しかし、私の先輩や私はこれらの本を読んで多くの情報を得て研究したのである。私のシャーマニズムの研究の大きな流れは、植民地研究の負の遺産からと言ってもよい。私は同著者の『朝鮮の風水』(1931年)を1990年に韓国語で民音社から翻訳出版したことがある。批判を受けながらも、学界や出版界に新鮮な衝撃を与え、すぐ韓国と日本で日帝植民地史の研究が盛んに行われようになり、今では一つのブームになっていることは否定できない。
 本書はシャーマニズムの韓半島全体の国家的調査によるものであり、唯一なるものである。それ以降、今まで南北の調査は行われていないからである。その調査は植民地統治期の警察による調査であるから価値を否定する人もいるが、歴史資料とはそういうものだと思う。シャーマニズム研究の重要な枠組みを提示した秋葉隆氏の研究も実は本書によるものであることを私は最近明らかにした。著者は当時の韓国社会を理解するために調査と研究を始めたが解放後、主に国文学者の研究によって文学的、そして固有文化、ナショナリズム化へつながったのは残念と思っている。本書を通じて、民間信仰の社会的研究が進むことを望む。
 まず私が翻訳草稿を作成し、脚注などで最近の研究成果も含めた後に朴ホウォン氏が註の補完と校正を行った。出版事情が厳しい中でも出版を決行してくれた民俗苑の洪鐘和社長と朴編集委員に感謝したい。