崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

ノーベル化学賞受賞

2010年10月08日 05時29分27秒 | エッセイ
 二人の日本人、北海道大名誉教授の鈴木章氏(80)と、米パデュー大特別教授の根岸英一氏(75)がノーベル化学賞を受賞することが決まって日本中が嬉んでいる。二人はアメリカのパデュー大で故ハーバート・ブラウン博士の下で留学し「その道ひと筋に」研究をした人である。その後日米に分かれ、世界的業績を挙げたのである。二人の言葉が多く流れている。賞金を研究に使いたいとも言う。高齢な方が賞金で世界旅行などで楽しんでもよさそうであるが、彼らにとっては研究が本当に「楽しい」ものであるようである。科学は真理を追求するものとか、神のみぞ知るなどの言葉も発している。
 二人の受賞はアメリカ産とも言える。「なぜアメリカでなければならないか」という人もいる。しかし二人とも日本人であることに誇りを持って語る。それは日本で生まれ育って基礎教育をきちんと受けたからであると言う。日本の「専門バカ」の精神に基き、そしてアメリカでの能力主義の接点のような受賞ともいえる。彼らを含めて日本人の受賞者が18人に登ることは素晴らしい。大部分の受賞者は国立大学で国費に恵まれて研究した人である。いま国立大学も法人化してその体制が変っている。基礎科学に関心を持つ人も少なくなっているという。その環境の変化も憂いではあるが、「この道一筋」の人が多くいる限り日本の潜在力は発揮されるだろう。このような力が他のアジアにも広がって欲しい。ただ本当の賞はなんだろうか、考えている。