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詩の英訳(1)

月曜日、。旧暦、9月30日。

土曜日は、鳴海英吉研究会だった。報告会と朗読会、二次会、三次会と出席して、いろいろ刺激を受けた。とくに、王朝文化と拮抗し、ときに内側から噴出し、脈々と流れる民衆文化のありように大変興味を持った。鳴海英吉の詩には、確かに、その流れが来ている。「詩」は、明治の西欧詩と日本語との出会いから、始まったという言説も、ある面、言えているが、それは詩の歴史の一つの結節点にすぎないと思う。日本の詩の源流には、遠くアイヌのユーカラや万葉集の「東歌」、梁塵秘抄や山家鳥虫歌などがある。こうした古いものの中に、アクチャルなものが眠っている、そんな気がする。けれど、同時に、日本・日本と狭く固まりたくない。「日本」と言ったって、古代からずっとインターナショナルだったのだから。海外文化を合わせ鏡のように、日本の詩の歴史を見つめられれば、と思っている。

朗読会で、ぼくも鳴海英吉の詩を朗読させてもらった。今回は、鳴海さんの詩を英訳する機会に恵まれた。主催者の鈴木さんに背中を押してもらわなければ、めんどくさがり屋のぼくにはできなかったろうと思う。いい経験になった。

以下に、家内を含む、何人かの協力を得て、英訳した鳴海さんの詩を書いてみたい。



雪  4
              鳴海英吉





言い残すことは なにもないと言う
本当にないかと聞くと 本当にないと言う
じゃあ死んでくれ ああ と答えるから
毛布を頭まで上げてやった
すうーと気持ちよさそうに死ぬのである
わめきも 泣きもしない
おまえさんは こんな死に方でよかったのか
おれだけがブルッと身ぶるいをして
幕舎の入り口でじゃあじゃあ小便をする
幕舎の外は又も雪
おい雪は空からふるなどと 言うな
烈しく暗い空に向かってふき上がるのだ
誰も信じてくれないから 言うな



SNOW 4
                     Eikichi Narumi



“I have no message to leave”, he said.
“No message? Really? ”, I asked and “No”, he replied.
“Well, let you have a death”. “OK”.
When he answered, I drew up his blanket to his head.
He seemed to die comfortably,
Without screaming and crying.
I doubt whether you would be pleased to die such a way.
I shivered alone,
And urinated noisily at the entrance of the camp.
It snows again outside it.
Hey! Don’t say such a silly thing as snow falls from the sky.
It blows up to the dark sky strongly.
Don’t say that, as nobody believes it.


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