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【五十嵐秀彦の俳句8】







殺伐といふ字に秋の薔薇を置く



「暗渠の雪」(2023年)#暗渠の雪 #五十嵐秀彦



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まず、置かれたのが「秋の薔薇」である。夏の薔薇や冬の薔薇に比べると、精彩さと力を欠く「秋の薔薇」――これが、「殺伐」という字の横に置かれた。本来、秋の薔薇は、殺伐と拮抗しない、対抗しない、ましてや、打ち消すことなどできない。

だが、どうだろう。一読して、拮抗している。

それは、「殺伐といふ字」という措辞にある。ここに、「字」が一文字入っているだけで、「秋の薔薇」は、存在として――文字ではなく――立ち上がってくるのだ。その秋の薔薇のオレンジ色まで。

本物の秋の薔薇には、いくら殺伐でも勝てっこないのだ。

弱い力が、言葉の魔力で、逆転して強い力に転じる――ここに「詩の力」が働いている。

それは、存在と言葉の間にズレと一致の弁証法があるからにほかならない。

※萩が咲いて、名月があがったので、鑑賞の第二期を始めます。断続的に鑑賞文をアップします。





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一日一句(3069)







萩散らす風は萩より来たりけり






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