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【五十嵐秀彦の俳句5】







きーんと音して蛾が潰されてゐる


「暗渠の雪」(2023年)#暗渠の雪 #五十嵐秀彦



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電灯は電圧の関係で、「きーん」と音を立てることがある。ここは、戸外の灯の下だろう。

その明かりの下だけスポットライトのように、光りが丸く落ちているが、そのほかは闇である。その闇は、天から降りてくる、そういうスケールの大きな闇である。夏の星も瞬いているだろう。

この「きーん」という音である。明かりの電圧の音だろうか?
 
私は違うと思う。

路上に踏みつぶされた蛾の死体を見て、とてつもない孤独を感じた。

その孤独の音だろう。

潰された蛾が孤独なのではない。それを見た作者の孤独である。

孤独という観念は、自然的存在にはない。社会的存在である人間固有のものだろう。

「蛾が潰されてゐる」

あたりは宇宙とつながっている闇である。

一人ということが
潰された蛾によってせりあがってくる。

「きーん」は、そんなときに聞こえてくる。

宇宙の耳鳴りなのである。




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一日一句(2996)







劇よりも劇的なるは夏天かな







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