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公開講座『ルカーチの存在論』25周年 第6講「障害者の社会運動について」(再掲)







(参考記事)昨年2015年の11月22日に行われた公開講座『ルカーチの存在論』25周年 第6講「障害者の社会運動について」(「青い芝の会」元事務局長の利光徹さん)から、いまの状況に有効と思われる記事を公開講座の公式ページから再掲します。


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公開講座「ルカーチの存在論」25周年第6講前半「障害者の社会運動について」福岡から上京された「青い芝の会」元事務局長の利光徹さんの講演。

この講演は、われわれに激しい衝撃と感銘をもたらしました。言語が聞き取れない、コニュニケーションが普通に成り立たない。利光さんは、われわれの言葉を完全に理解するけれど、われわれには、利光さんの言葉が聞き取れない。それでも、頑張って聞き取っていると少しづつわかってくる。そんな中でわたしが聞き取った印象的な話は、健常者は、障害者を治そうとするけれど、健常者と障害者の関係が「障害者」を作り出す。だから、健常者と障害者の関係を回復する(変更する)必要がある。このときの関係は、社会全体を含んでいるので、大変に難しい。ほかの被差別者、被抑圧者の解放運動と連携する必要がある。また、両親との関係では、親にこう言われたそうです。自分たちが生きているうちは、おまえを守ってやる。だが、死んだら、誰も守ってくれない。だから、死ぬときはおまえを道連れにする。利光さんは、「愛」を否定します。これが愛だろうかと。社会で流通している「愛」は、自分たちを殺害する愛であると。この愛は、先日の茨城県の教育委員会で優生思想を述べた委員と重なりますね。また、同じよう「正義」も否定します。それは多数決で決まるものだからです。脳性マヒの障害者を否定してきた「正義」にほかならないと見抜くのです。(続く

きのうの脳性マヒの社会運動家、利光徹さんの講演の続き。彼の講演のあと、質疑応答が活発に行われた。その中で、存在の価値を、使用価値、交換価値だけではなく、「存在価値」という価値を考え、利光さんたちのように脳性マヒで働けない人々にも価値を見出そうという意見があった。この意見は、存在していることそれ自体を価値として、その存在に聖性、あるいは仏性を付与しようとするものである。これは、優生思想に基づき、「劣った人種であるユダヤ人」を殲滅したナチスの経験を反省的に踏まえている。一見、良さそうに思えるこの思想に、わたしは批判的である。きのうも批判的な意見を述べたが、あらためて考えてみると、次のようにまとめることができる。

・ 障害者はあくまで人間存在であって、聖なる存在ではないこと。また、そうなることは障害者は望んでいないこと。脳性マヒは神でも悪魔でもない。
・この思想はいわば、「置物思想」であり、人間存在の本質を把握し損なっていること。言い換えると、人間が社会的な実践主体であることを、捨象していること。つまり、この思想はなにもできない、しなくて良い「障害者」の再生産に加担していること。
・利光さん自身は、自分たちが何のために生まれてきたのか、内省したときに、既存の価値の破壊者として、存在の積極的な意味を見出している。これは、聖なる障害者の姿ではなく、社会的実践主体の姿なのである。
・この問題を考えるには、労働を原理的に思索するのがもっとも根源的である。なぜなら、労働は人間の社会的実践のモデルだからである。
・以上のことから、人間の使用価値の回復を考えるべきだと思える。これが人間の商品化であるといった考えや、機能主義的であるといった批判は、「近代」という枠組にとらわれていると思う。近代批判が要請される所以である。
・もうひとつ、きのう学んだことがある。それは、理論の最大の批判者は現実だということである。理論家ではない。利光さんの体験しているような極限の現実に理論は耐えられるのかが常に問われている。これは、芸術に対しても同じことが言えるのである。
・非常にいい勉強になった。こんなに素晴らしい時間なるのがわかっていたら、もっと宣伝すべきだった!



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一日一句(1596)







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