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詩的断章「やっぱりひかりの櫟」







やっぱりひかりの櫟





南の窓のすぐ前に
ちょうど目隠しのように
二本の櫟が立っている

冬にずいぶん枝を剪定されて
丸裸同然になっていたから
ちょっと心配していた
春には芽吹くのだろうか

そんな心配はまったく無用で
夏にはツンツンと細長い枝を
垂直に空へ伸ばして
さざなみのような長い葉をあっというまに
茂らせて

光と風を
こんもり宿している二本
七月の朝のひかり―
それは葉のアウラと
一体になって楽器になる
風の日は風の楽器
雨の日は雨の楽器
音を違えても
やっぱりひかりの櫟

たぶん、窓際で新聞を読むわたしが一番
揺れるひかりを観ている
たぶん、洗濯物を干す妻が一番
ひかりの音を聞いている
たぶん、蜘蛛の巣の大嫌いな娘が一番
ふたりの会話を聞いている

まだ櫟のどんぐりをだれも見たことがない






初出「浜風文庫」





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