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ショック・マーケティング




■shock marketing

「ショック・マーケティング」という新しい概念を提案したい。これは、惨事に便乗して、マイナスのイメージの存在をプラスに転化することを狙って、危機を利用して民衆に売り込む、という権力の操作(manipulation)を指す。熊本地震では、ショック・マーケティングは、複数行われている。ひとつは、オスプレイの売り込みである。オスプレイのマイナスイメージを払拭して、民衆にプラスイメージを浸透させ、日米の連携を売り込んでいる。このショック・マーケティングの最終目的は、日米の集団的自衛権体制=戦争法体制の売り込み(合理化・正当化)である。オスプレイ投入の不自然さ、不合理さは、多くの人が語っている。ここでは、2つの記事を紹介したい。


ウェブ雑誌「リテラ」の4月20日の記事「オスプレイが運んだのは段ボール200個強だけ! 何度でも言う、オスプレイ投入は安倍政権の震災政治利用だ。」

オスプレイ投入であからさまな「地震被害の政治利用」が明らかになった安倍政権。しかし、安倍応援団はオスプレイ投入に疑義をはさんだメディアに片っ端から攻撃を仕掛けている。

朝日新聞、毎日新聞、そして、我々リテラに対しても同様だ。本サイトは19日夕方に配信した記事で、「すでに物資の輸送は、被災地近くの海上自衛隊の鹿屋基地(鹿児島県鹿屋市)から出動したヘリ部隊が16日時点行っている。この部隊が機能しているのに、オスプレイをわざわざ投入するのは不自然」「木更津の陸上自衛隊第1ヘリコプター団のCH-47を使えばいいのに、そちらに要請の動きもなかった。はっきりいって、昨日の作業なら、CH-47で十分対応できる」という防衛省中堅幹部のコメントを紹介した。

すると、「陸上自衛隊の第1ヘリコプター団のHPに、16日、CH-47が被災地支援に向かったことが書かれている」として、記事をデマだと決めつけるツイートが殺到したのである。

たしかに、木更津の第1ヘリコプター団は16日、4機を各基地から熊本周辺の駐屯地への隊員輸送と物資輸送に派遣しており、新たに取材したところ、18日にも熊本への輸送業務を行っていたこともわかった。

しかし、だからなんだというのか。18日にオスプレイが行った空輸任務からCH-47が外されていたことには変わりはない。
しかも、熊本大地震にこれまで木更津から投入されたCH-47は数機。多くは、今も待機状態にあるのも事実だ。

また、CH-47が熊本に派遣されていたとすれば、オスプレイはますます必要がなかったということになるだろう。それこそ、オスプレイが行った物資輸送をそのまま熊本にいるCH-47にやらせることができたはずだからだ。

オスプレイが行った陸上自衛隊高遊原分屯地から南阿蘇村の白水運動公園への空輸はもちろん、CH-47でも十分可能だった。というか、オスプレイが行った任務は、CH-47すらも必要なかった。

18日、2機のオスプレイが輸送したのは、ペットボトル1200本、食料、テント80張り、簡易トイレ160個など。共同通信によれば、段ボールの数は「200個以上」という程度だったという。

しかも、運んだ先の南阿蘇村・白水運動公園は比較的、離着陸のしやすい場所だった。自衛隊ヘリはもっと難しい場所でも離着陸していたが、オスプレイにはわざわざ安全な場所が選ばれ、そこから、自衛隊が車両で各避難所に運んだのだ。

これらを見れば、オスプレイ投入が安倍政権による政治的パフォーマンスであることは明らかだろう。
中谷元防衛相は18日の参院決算委員会で、「自衛隊が持っているヘリなどの運用をもってしてもまだ十分に行き届いていない」とオスプレイ導入の理由を述べたが、これは大ウソだ。

西日本新聞によると、「自衛隊は輸送だけで80機以上、救難や哨戒などの用途を含めると530機のヘリを所有している」が、防衛省の18日17時の発表では、熊本大地震に投入された航空機の数はこの6分の1にも満たない。

安倍政権が一方で自衛隊機のヘリを出し惜しみし、そのかわりに無理やりオスプレイを投入したのはまぎれもない事実だ。
そして、その裏には先の記事で示したように、米軍との密約、そして、自衛隊のオスプレイ佐賀空港配備のための地ならしという意図がある。

何度でも言う。オスプレイ投入は、安倍政権による震災のもっとも悪質な政治利用だ。これは、安倍応援団がいくら「デマ」「嘘」とわめいてみても、絶対に変わることのない事実である。

(編集部)



もうひとつは、自衛隊を取材している中田宏さんという高知民報の記者の方が、オスプレイ投入の不合理さについてフェイスブックに投稿された記事。

<quote>

オスプレイを使うことが計画されていた南海トラフ地震を想定した日米共同統合防災訓練(TREX)を、何度か取材した関係で、災害救援時のオスプレイの能力について調べたことがあるのですが、CH47チヌークとCH53のもつ災害対応能力の高さはかなりのものがあります。

自衛隊のすごい所は、スタンドアロンで、他の組織の世話にならず数千、数万人の部隊や車両、航空機を動かし作戦を遂行できること。だからこそ被災地で抜群の組織力を発揮できる。

一方で米軍のオスプレイ、数機だけちょこっと参加しても、独立していないので、荷物の積み下ろしから水撒きまで自衛隊や地元消防が世話をしなければならない。さらには日米の調整をする手間が相当かかります。今は被災者の支援をすべき時であって、米軍のサポートをする暇はないはず。

自分の体験からも、自衛隊だけの作戦時は透明性が高いのに、米軍がからむと情報が直前まで出てこず急に決まったかと思うと、理由もなくころころ勝手に変えて何の説明もないということが何度もありました。

米軍は実際に戦争をしている軍隊だからなのでしょう、ミリタリーファーストが徹底していて、何の説明責任もはたさない。いつも防衛局が操り人形みたいに出てきて「運用上のことは言えない」と言うだけです。自衛隊のことなんか軽く見てますからね、世話をさせられる自衛隊の現場は翻弄されます。

もしも、本当に空輸能力が不足していて、米海兵隊の支援をうけなければならない状況であれば海兵隊が所有しているオスプレイより輸送能力の高いCH53が優先されなければおかしいし、何より陸自・空自が誇るCH47J、現役バリバリの世界の第一線で使われているチヌ-クが、フルに活用されていない状況下なわけですから、「オスプレイを出した」という実績を作ること自体がミッションになっていて、被災者のことをまじめに考えてのこととは思えません。

<unquote>


危機の時に、存在の本質は現れる。安倍政権というものが、国際国家利権村と結びつき、これの巨額利権のために民衆操作を行う政権であることは、明らかなのである。ショック・マーケティングのもうひとつの重要で深刻な例は、菅官房長官の次の発言である。

「菅義偉官房長官は15日の記者会見で『今回のような大規模災害が発生したような緊急時に、国民の安全を守るために国家や国民がどのような役割を果たすべきかを、憲法にどう位置づけるかは極めて重く大切な課題だ』と述べた。14日の熊本地震の発生を受け、憲法に緊急時の政府の権限などを定めた『緊急事態条項』を設ける必要性を問われたことに答えた。

 自民党は、野党時代の2012年にまとめた改憲草案に緊急事態条項を盛り込んでいる。首相が緊急事態を宣言すれば、法律と同じ効果を持つ政令を出すことや、国会議員の任期を延長できるなどとしている。安倍晋三首相も、昨年11月の衆院予算委員会で「草案のどこから始めるべきか、緊急事態条項からやるべきだという議論もかなり有力だ」と話していた。」(4月16日の朝日新聞)

これは、「緊急事態条項」をこの機に売り込み、自民党の憲法改悪を正当化するきわめて悪質なショック・マーケティングである。9条改悪より先に、「緊急事態条項」を優先させている自民党の趣旨は、権力が緊急時と判断したときに、民主的な手続きを踏まえない権力の意志決定を、法的に正当化するものである。これで、実質的に、9条は死に体になる。


3つめは、まだ、それほど話題になっていないが、政権の基盤である「日本会議」の熊本地震への募金活動である。「日本会議」は、この機に、「日本会議」自体の売り込みを謀っている。憲法改悪をめざす右翼団体というマイナスイメージを、善行をしているまともな団体というプラスイメージに塗り替えようとしている。

「ショック・マーケティング」は、「ショック・ドクトリン」とペアで現れる。ショック・マーケティングに注目することは、同時に、現在の「ショック・ドクトリン」を明らかにすることでなければならない。







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