goo

西行全歌集ノート(20)




風越(かざこし)の峰の続きに咲く花はいつ盛りともなくや散りなん

西行 山家集 上 春

※ 風越の峰=信濃の風越山。この歌のしんとして人気のない情景に惹かれて、風越山が気になって調べてみた。

すると、歌枕になっていることがわかった。だが、「吹き乱る風越山の桜花麓の雲に色やまがはん」(夫木和歌抄)も、「風越の峰の上にて見るときは雲は麓のものにぞありける」(詞華和歌集)も、西行の歌より後の時代に成立している。つまり、歌枕としては、西行の歌がパイオニアのようだなのだ。律令制度の地方官の貴族から、風越山の花のことを聞いたか、西行自ら旅した見聞がベースなのかもしれない。最後の「なん」は「完了(確述)の助動詞「ぬ」の未然形+推量の助動詞「む」」で、「きっと散ってしまっているだろう」と強い推量を表わしている。ここから考えると、西行自身に、確かな根拠があるように思える。実際に見たことがあるか、花の季節ではなくとも、風越山へ行ったか。遠くから、風越山の今を想像して歌っている。そんな歌いぶりではなかろうか。




コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

一日一句(956)







女房殿春の顔してゐたりけり






コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )